2011 Fiscal Year Research-status Report
抗ストレス性アレルギー物質の探索を目的とする新規アッセイ法の開発と応用
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23510268
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Research Institution | Mukogawa Women's University |
Principal Investigator |
石黒 京子 武庫川女子大学, 薬学部, 教授 (70151363)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奥 尚枝 武庫川女子大学, 薬学部, 助教 (90281518)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | アレルギー / ストレス / 血流量 |
Research Abstract |
ストレスがアトピー性皮膚炎や喘息などのアレルギーを重症化・再発させることが知られているが、これまでストレスなど複数の病態や要因の併発を反映したアレルギーの評価系は皆無である。そこで本申請では、申請者らの先の血流に関する独自の研究成果をもとに、新たにストレスが関与するアレルギー反応を阻害するシーズ探索のための、血流量を指標としたin vivoアッセイ法の開発を目的とした。さらに開発したアッセイ法を用いて天然から新規メカニズムによる副作用の少ない阻害物質の探索を目指すことを目的に研究を行っている。 卵白リゾチーム(HEL)を用いた感作により、マウスの末梢血管の血流量は、アレルギーの開始段階(induction phase)から9日間で血圧の関与無しに、平常血流量の約70%まで、有意に再現性よく低下することを報告している。そこでまずストレスのみによる血流量への影響を検討した。その結果、ストレス負荷マウスの血流量は、無処置マウスに比較して約80%の有意な低下が見られた。またこの際の血中コルチゾール量も有意に増加することを確認した。 次に感作マウスに心理的ストレスを負荷し、血流量に及ぼす影響を観察した。その結果、感作マウスと感作マウスにストレス負荷を行った場合の有意差が確認できなかった。これは感作のみのマウスの血流量が低下しすぎるためと考えられた。この場合の有意差は、今後の実験に不可欠であることから、まず抗原量の検討を行った結果、最終的に半量の25μgの抗原量で感作が成立し、induction phaseにおける血流量低下を確認できることが判明した。今後のこの血流量低下に対してストレスを負荷し、有意差が出るよう研究を進める。 さらに動物実験において、動物の苦痛と実験時間を最小限にすることが求められているため、当初の方法と異なるストレスの負荷方法の検討も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ストレス負荷マウスの血流量が、無処置マウスに比較して約80%の有意な低下が見られたことからストレスを血流量で測定できることを明らかにした。しかし先に述べたように、先に報告した我々の感作方法では、感作のみのマウスの血流量が低下しすぎるため、感作マウスにストレス負荷を行った場合との有意差が見られなかった。そこで感作のみのマウスの血流量の低下を15%程度に抑制するための抗原量の検討から行わざるを得なかった。しかしこれは想定内での条件検討であり、最終的に抗原量を半量の25μgにすることにより感作が成立し、induction phaseにおける血流量低下を確認できることが判明した。今後はこれにストレス負荷を行い評価を行えば、ストレスとアレルギーの併発を、確実に再現性よく血流により反映する病態モデルマウスが作製できると考えている。 一方で、大学における動物実験の規制が厳しくなり、動物の苦痛に最大限に配慮し、実験時間を最小限とすることが求められているため、ストレスの負荷方法を当初予定した方法から変更せざるを得なくなったが、これらの条件検討も同時に進めているため、研究全体ではおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究結果を基に、HEL感作マウスに対し苦痛を最大限に配慮し、実験時間を最小限にできるストレスの負荷条件を検討し、ストレスとアレルギーの併発を血流量により反映する病態モデルマウスを作製する。血流量の測定は、拘束ストレスが最小限になるように工夫されたマウスの専用ホルダーを新規に購入し、利用する予定にしている。 さらに作製した病態モデルマウスを用いて、実験スケジュールの最短化を行い、最終的に血流量を指標とするin vivoアッセイ系を構築する。さらにこれを用いて天然資源からのシーズやリード化合物を探索する。 また上記モデルマウスの血流量低下のメカニズムを解明する。HEL感作のみの血流量低下に深く関与する物質(NO,COX-1、2, ET-1,PGI2およびiNOS etc.)が、ストレス負荷した感作マウスではどのように機能するかを明らかにし、両者の血流低下メカニズムの相違を明らかにすることにより、本アッセイ法の位置づけを明確にする。 一方、感作マウスおよびストレス負荷感作マウスからそれぞれ血管内皮細胞を摘出し、得られたタンパク質を用いて蛍光標識二次元ディファレンスゲル電気泳動法(2D-DIGE法)に準じたプロテオーム解析を行なう。本法は、2種類のサンプルを異なる蛍光色素で標識し、同一ゲル上で二次元電気泳動を行った後、波長を変えてそれぞれのスポットを検出する方法で、泳動の誤差が生じる事なく、2つのスポットを比較する事ができる。両者の発現量を比較し、ストレスに関連して増加するタンパク質スポットを抽出後、MALDI-TOF-MSにより解析し、標的タンパク質を特定する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
消耗品費:主として必要不可欠の実験動物に充てる。また、一部はマウスの専用ホルダー、病態誘導用の各種試薬、各種阻害剤, ストレスの指標となるコルチゾールや各種サイトカイン定量用の市販のキットおよび、プロテオーム解析関連の固定化pH勾配ゲルや専用蛍光試薬、活性成分の単離・精製に用いる各種クロマト用カラム、樹脂および溶媒,実験器具の購入に充てる. その他、シーズ植物の探索に当たって必要となる天然材料調達の費用などに充てる。 謝金:実験補助作業のアルバイト謝礼、外国語論文の校正依頼費への謝金に充てる。 旅費:天然資源の調査、採集のための旅費、研究成果発表の目的で国内外の学会参加旅費 その他:機器分析測定依頼費や、専門機関への測定依頼費に充てる。
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Research Products
(7 results)