2013 Fiscal Year Annual Research Report
希土類錯体を用いたチロシンリン酸化のリアルタイム検出
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23510276
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
須磨岡 淳 筑波大学, 医学医療系, 講師 (10280934)
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Keywords | 希土類 / リン酸化 / シグナル伝達 / ケミカルバイオロジー / 分析科学 / チロシン / キナーゼ |
Research Abstract |
タンパク質のリン酸化は、細胞機能の調節に大きな役割を担っている。特にチロシン残基のリン酸化異常は、細胞のがん化と関与していることが多く、創薬の大きなターゲットとなっている。平成24年度までに、Tb(III)錯体がオリゴペプチド中のチロシン残基リン酸化のみに発光応答することを明らかにした。また、タンパク質チロシンキナーゼ(PTK)やホスファターゼ(PTP)に対する既知の阻害剤の効果が、錯体からの発光から概算できることを見出した。今年度は、Tb(III)錯体からの発光を用いて、定量的に阻害剤の効果を評価し、従来の評価法との比較を行った。その結果、両手法で得られた値はよい一致を示すことが判った。しかし、種々のオリゴペプチドに対して同様の評価を行ったところ、正電荷を持つような基質オリゴペプチドでは、リン酸部位と正電荷を有しているTb(III)錯体の相互作用が相対的に弱くなり、リン酸化の有無による発光応答が小さくなることが明らかになってきた。そこで、Tb(III)錯体にアルキンを、基質ペプチドにシステインを介してアジドを導入し、両者のコンジュゲート化を行った。こうして得られた、Tb(III)錯体-基質ペプチドコンジュゲートに対して、PTKによるリン酸化の影響を観測したところ、明確な発光増大が確認され、ミカエリス定数(Km)や最大初速度(Vmax)などのパラメータを算出することが可能であった。また、基質ペプチドに変位を導入して、各種パラメータを比較したところ、極めて妥当な値を得ることに成功した。このように、本研究で見出したTb(III)錯体は、様々な基質ペプチド中のチロシン残基のリン酸化状態をモニターするツールとして利用可能であり、PTKやPTPの阻害剤のスクリーニングに極めて有効なツールとなり得ることが明らかになった。
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Research Products
(3 results)