2013 Fiscal Year Research-status Report
立体構造を基盤とした抗生物質アシラーゼ変異体酵素の設計と合成
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23510280
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Research Institution | Toyama Prefectural University |
Principal Investigator |
磯貝 泰弘 富山県立大学, 工学部, 准教授 (00201921)
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Keywords | アシラーゼ / 抗生物質 / エキノキャンジン / モデリング / ドッキング / 変異体設計 |
Research Abstract |
糸状菌Coleophoma empetri F-11899が生産するキャンディン系抗生物質である環状リポペプチドFR901379は,放線菌由来のアクレアシンAアシラーゼ(AAC)による脱アシル化後,新たなアシル基を付加することにより,深在性真菌症治療薬Micafunginとして利用されている。AACは,セファロスポリンアシラーゼ(CA)など,βラクタム系抗生物質の生産に利用されている各種のアシラーゼ酵素と弱い配列相同性を示すが,その立体構造や基質認識機構は不明である。本研究では計算科学的手法を用いて、AACとβラクタムアシラーゼとの基質認識機構の違いを明らかにして、キャンジン系抗生物質を脱アシル化出来る新しいアシラーゼ酵素の取得を目指す。 AACのホモロジーモデルと基質とのドッキングシミュレーションの結果から、AACには、アクレアシンAの長いアシル側鎖を格納する細長い結合ポケットが存在しているしている可能性が示された。一方、CAは比較的浅い結合ポケットを持ち、GL-7-ACAの短いアシル側鎖は格納出来るが、アクレアシンAのアシル側鎖は結合出来ない。前年度作製したCAのアシル基結合ポケットの底部に存在するPhe残基(F177(β))をグリシンに置換したCA変異体F177(β)Gをベースとして、さらに結合ポケットを深くするような複数のCA変異体の立体構造モデルを作製した。これらのモデルと基質とのドッキング計算を行った結果、二つの変異体が、F177(β)Gに較べて、アクレアシンAに対してさらに良好なドッキングエネルギーを与えた。そこで、それらの変異体遺伝子を、すでに作製済みのF177(β)G変異体遺伝子をテンプレートとし、変異プライマーを用いたPCRを行って作製した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
AACのホモロジーモデルを用いて、アクレアシンAを基質としたドッキング計算を行い、野生型CAの結晶構造を用いた計算結果と比較することにより、AACとCAの基質認識が異なる構造化学的な理由を提案した。この考察に基づいてCA変異体の設計と合成を行い、アクレアシンAに対して活性が増大した変異体酵素が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までに得られた研究成果に基づいて、さらなる変異体酵素の設計と合成を行い、AACとCAの基質認識の違いの構造化学的な理由について実験的検証を行う。さらに、キャンジン系抗生物質生産に利用出来るような活性の高い変異体酵素の取得を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究は当初計画どおり進行しており、年度内に発注した物品(消耗品)のいくつかが品切れのため期日までに納入されなかったため次年度使用額が生じた。 次年度は本研究課題の最終年度に当たる。これまでに得られた知見をとりまとめ、必要な追加実験と最後のデータ収集と解析を行い、学会発表や論文等を発表するための費用に充てる。
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