2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23510281
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
浅井 章良 静岡県立大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (60381737)
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Keywords | 抗がん剤 |
Research Abstract |
DNAアルキル化剤は、一般的にDNAと共有結合複合体を形成によるDNA複製阻害がその主たるメカニズムと考えられている。本研究ではDNAアルキル化剤の新規メカニズムを解明し、その優れた薬効を裏付けると共に次世代抗がん剤のデザインへ繋げることを目的としている。これまでのアルファスクリーン法を用いた非細胞系での試験の結果、ベンダムスチンは、組換えヒトSTAT3(rhSTAT3)とリン酸化チロシン含有ペプチドとの結合を強力に阻害する、つまりSTAT3-SH2アンタゴニストとして作用することを明らかとしてきた。またベンダムスチンはSTAT3が恒常的に活性化している乳がん細胞MDA-MB-468に対して、比較的強い細胞増殖阻害を示した。さらに不活性型代謝産物はSTAT3阻害活性を示さなかったことから、ベンダムスチンの細胞増殖阻害活性にはSTAT3阻害が重要であることが示唆された。そこでシステインのチオール基と容易に反応可能な蛍光ラベル体Alexa488-C5-madeimideを用いてrhSTAT3への蛍光色素の取り込み実験を行った。その結果、ベンダムスチンは濃度依存的にrhSTAT3への蛍光色素取り込みを阻害し、不活性代謝産物では阻害が見られなかった。以上の結果からベンダムスチンはrhSTAT3のシステインと共有結合複合体を形成していることが示唆された。さらにアルキル化部位を同定する目的で、現在STAT3の二量化において重要なSH2ドメイン及びその近傍に存在するシステインのアラニン置換体を作製中である。ベンダムスチン誘導体に関するこれまでの構造活性相関情報から、カルボン酸部位の修飾が可能と判断された。そこでこの部位へのポリエーテルリンカーを介してビオチンを導入することにより、ビオチンラベル体の合成を完了しており、今後細胞系の解析に用いる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ベンダムスチンまたはシスプラチンを用いた実験結果から、これらアルキル化剤がSH-2ドメイン内またはその近傍のシステインのチオール残基と反応しているという仮説を立て、解析を進めてきた。rhSTAT3へのAlexa488-C5-madeimideの取り込み実験においてベンダムスチンは濃度依存的に蛍光色素の取り込みを阻害し、不活性代謝産物では阻害が見られなかったことから、ベンダムスチンはSTAT3-SH2内またはその近傍のシステインと共有結合複合体を形成していることが示唆された。このことがベンダムスチンによるSTAT3-SH2拮抗作用に関係していると考えられる。そこでアルキル化部位を同定する目的でSTAT3-SH2ドメイン及びその近傍に存在するシステインをアラニンに置換した変異体の作製を進めている。これまでに、野生型STAT3のcDNAをテンプレートとしてインバースPCR. 法によって部位特異的な変異の導入に成功している。今後は発現ベクターを構築し合計5種類の変異型rhSTAT3タンパク質を取得予定である。現状では非細胞系での選択的なSTAT3阻害が明らかとされたものの、細胞系での明確なSTAT3阻害が検証できていない。ベンダムスチンは反応性の高いNH-2構造を有するため不安定な薬剤である。よって特に細胞系での解析に関しては薬剤接触時間や溶液調製等の条件検討には十分な時間を割く必要があると考えている。また細胞株の検討も必要と考えられる。薬剤処理した細胞の核抽出液中のSTAT3によるDNA結合活性(ELISA法)や細胞イメージアナライザーを用いたSTAT3の核内移行の解析について条件を検討中である。ビオチンラベル化ベンダムスチンの合成に成功しており、これをツールとして用いることにより、STAT3並びにそれ以外の標的タンパク質の可能性を含めて解析を進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
薬剤処理した細胞の核抽出液中のSTAT3によるDNA結合活性(ELISA法)や細胞イメージアナライザーを用いたSTAT3の核内移行の解析について条件検討を行い、ベンダムスチンや今回新たに阻害活性が見出されたシスプラチンについて、細胞系でのSTAT3阻害活性を検証する。おそらくこれらの薬剤は共通のシステインをアルキル化していることが推測される。アルキル化部位の同定を目的として、STAT3の二量化において重要なSH2ドメイン及びその近傍に存在する5か所のシステイン(Cys687, Cys712, Cys468, Cys550, Cys542)を選択しアラニン置換体を調製する。これら変異体に対する薬剤の感受性及び結合活性を検討することにより、アルキル化部位を同定予定である。また、既に合成済みのビオチン化ベンダムスチンを解析用ツールとして用いることにより、細胞内STAT3へのこれら薬剤の作用、及びSTAT3以外の標的タンパク質の可能性についても検討を行う。ベンダムスチン同様に臨床で優れた抗腫瘍効果を示しているシスプラチンがSTAT3に直接作用することも新たに見出しており、今後シスプラチンによる作用機序も併せて作用機序解析を進め、新規抗がん剤のデザインと創出に活かす予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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[Presentation] Merged structures as new STAT3 inhibitors: the “chimera” compounds
Author(s)
Arianna Gelain, Daniela Masciocchi, Stefania Villa, Fiorella Meneghetti, Alessandro Pedretti, Daniela Barlocco, Laura Legnani, Lucio Toma, Byoung-Mog Kwon, Shintaro Nakano, Akira Asai
Organizer
22nd International Symposium on Medicinal Chemistry
Place of Presentation
Berlin (Germany)
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