2012 Fiscal Year Research-status Report
河川流域におけるアクチノバクテリアの多様性解析と遺伝子資源としての保全
Project/Area Number |
23510291
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
早川 正幸 山梨大学, 医学工学総合研究部, 教授 (30126651)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山村 英樹 山梨大学, 医学工学総合研究部, 助教 (70516939)
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Keywords | 遺伝資源 / アクチノバクテリア / 生態学 / 分類学 / 微生物 |
Research Abstract |
アクチノバクテリアの選択分離方法として陰イオン交換樹脂のNaCl乖離バッチ法の構築を前年度までに行った。その後、アクチノバクテリアがNaClに対して特異的な耐性を示すことが判明し、培地条件の検討を行ったところ、5%NaClを含有する1/5 NBRC 802培地(以後、5%SC)による希釈平板法がアクチノバクテリアの分離に適しており、NaCl乖離バッチ法よりも優れた分離効率を示した。以降の実験では5%SCを選択分離培地とした。更に、この培地により河川流域から新属・新種のアクチノバクテリアも分離できる事が分かった。本年度は河川流域のモデル系として沖縄県西表島のヒナイ川の上流から下流にかけてマングローブ根圏などの底泥の採取を行い、河川流域の比較対象として海岸からの底泥採取も行い、アクチノバクテリアの分離とその多様性について検討を行った。得られた試料は希釈系列を作成し、5%SCに接種し、30度で1~2週間の培養を行った。出現したコロニーを純化し、16S rDNA配列による種レベルの簡易同定を行った。 その結果、河川上流、下流、海岸からそれぞれ48株、49株、42株のアクチノバクテリアを分離・同定する事が出来た。これらの地域で普遍的かつ優先種として存在するのはMicrobacterium thalassiumであった。また、種の多様性に関しては河川下流域が最も高く、Isoptericola 属などを含む14種という多様なアクチノバクテリアを獲得する事が出来た。一方、河川上流域と海岸はアクチノバクテリアの多様性は7~8種と低いものの、新種推定株が多数検出された。 以上のことから、アクチノバクテリアの多様性は下流域が最も高く上流や海岸域では低いことが分かった。一方、保全すべき新種に相当するアクチノバクテリアは海岸および河川上流域に多く分布しており、今後は詳細な分類学的研究を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アクチノバクテリアの新規選択分離培地は効率が非常によく、陰イオン交換樹脂を用いなくても多数の菌株を得ることが出来た。また、分離株の16S rDNAの塩基配列を決定し、河川流域におけるアクチノバクテリアの分類学的な多様性を世界で初めて解明することができた。さらに、新種と推定される複数の分離株を得ることが出来たことから亜熱帯域の生態系には未知の分類群が存在することが明らかとなった。今後は、分離株のデータの再現性を確認しつつ、微生物保存機関に寄託を行うことで保全を行う。また、分類学研究としてペプチドグリカンのアミノ酸組成や脂肪酸、キノン組成、リン脂質パターンを確認し、近縁種との違いを生理性状試験により確認することで新種の提案を行う必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はアクチノバクテリアの新種推定株についてペプチドグリカンのアミノ酸組成や脂肪酸、キノン組成、リン脂質パターンなどの化学分類学試験を行い、近縁種との違いを生理性状試験により確認を行う。また、近縁種とのDNA-DNA相同性試験を行うことで、遺伝的な既知種との違いを明確にする必要がある。対象とするアクチノバクテリアはLysinimicrobium属、Microbacterium属、Isoptericola属、Demequina属から系統解析の結果から候補株の選抜を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(2 results)