2011 Fiscal Year Research-status Report
温暖化が里山の昆虫類の生物多様性の低下に及ぼす影響に関する研究
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23510297
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
石井 実 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 教授 (80176148)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平井 規央 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 助教 (70305655)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 里山 / 温暖化 / ギフチョウ / ゴマダラチョウ / ミヤコアオイ / 休眠 / ニホンジカ / カメラトラップ |
Research Abstract |
2011年度は、近畿地方南部産のギフチョウより採卵し、孵化した幼虫を20℃長日条件で飼育することにより蛹を得た。これらの蛹は、9月から大阪府南部の低地(標高約30m)と山地(約900m)に温湿度データロガーとともに置いた。また、近畿地方北部1ヶ所、南部4ヶ所の本種の産地(最近本種が確認されない産地を含む)の林床に温湿度データロガーを設置した。放置した蛹(羽化した成虫を含む)の回収とデータロガーのデータの吸い上げ・解析は2012年度に行う。 大阪府北部の産地では、近年、急激にギフチョウが減少しているため、コドラートを設けて本種の食草のミヤコアオイを含む林床植生の植物社会学的調査を開始した。林床植生の衰退には、温暖化による林床の乾燥化のほかに草食獣による過採食が疑われたため、防護柵を設置するとともにカメラトラップを配置した。防護柵外のカメラトラップには多数のニホンジカやイノシシなどの野生獣が写った。ミヤコアオイなどの林床植生は春先に伸長するため、防護柵内外の植生調査を2012年度まで継続して野生獣の影響を明らかにする必要がある。 ギフチョウ以外では、やはり里山の温帯性落葉広葉樹林に依存するゴマダラチョウの幼虫の越冬時の降樹のタイミングと気温との関係について、大阪府南部で野外調査を行った。その結果、本種の幼虫は短突起型になり体色が変化し始めてから食樹を下るが、その時期は11月中旬から12月上旬で、比較的短期間に行われることが明らかになった。食樹を下るタイミングに関わる環境要因としては気温があげられ、平均気温約11℃、最低気温約7℃より低くなるあたりがきっかけになると考えられた。今後は、文献調査等により、ゴマダラチョウやオオムラサキの越冬幼虫が食樹を下るタイミングが、温暖化とともに遅くなっているか、それにともなう生存率の変化はあるか等について明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2011年度はギフチョウの発生量が全国的に少なく、研究に十分な個体数が得られなかったことによる。そのため、本種の蛹を用いた温暖化の影響に関する室内実験ができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2012年度は、春先の気温変化が平均的な年に近いため、ギフチョウの発生が多く見込まれる。飼育担当の技術補助員を雇いあげるなどして、できるだけ多くの個体を飼育し、研究の遅れを取り戻す予定である。 一方、2011年度の化目ロトラップによる調査により、大阪府北部の産地ではニホンジカによるギフチョウの食草の採食が、本種の衰退に関わっている可能性が浮上した。当初の計画にはなかったが、防鹿柵・カメラトラップの設置と林床植生調査を継続し、このことを明らかにしたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費については、大型備品類は不要であるが、飼育容器やカメラトラップ、データロガー等の購入が必要であり、約30万円を予定する。 旅費については、各調査地と大学との往復のため、および韓国で夏季に開催される国際昆虫学会議で成果を発表するために、約30万円を予定する。 人件費・謝金については、ギフチョウの飼育補助や野外調査補助等のために技術補助員を雇いあげるため、約40万円を予定する。 その他の経費については、成果を学術誌に公表するため、約10万円を予定する。
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Research Products
(24 results)