2011 Fiscal Year Research-status Report
洪水時の攪乱強度とレフュージアに着目した礫原植生の維持機構の解明
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23510298
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
浅見 佳世 兵庫県立大学, 自然・環境科学研究所, 准教授 (40464656)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中山 昭彦 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30237458)
藤田 一郎 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10127392)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 生物多様性保全 / レフュージア / 植生動態 / 画像解析 / LESシミュレーション / 礫原 / 攪乱 / カワラハハコ |
Research Abstract |
本研究の目的は、洪水の攪乱を受けてもなお残存する分布地(レフュージア)に着目し、洪水時の攪乱の強度や頻度と植生動態との関係から礫原植生の維持機構を解明することにあり、大出水後の長期継続調査により得られるデータをもとに、生態学と土木工学の両分野の融合により、礫原植生の維持機構を解明しようとするものである。 研究内容は三つに大別され、植生動態の解析、流れの3次元解析、洪水時の画像解析からなる。本年度はまず、各解析に共通な解析の条件を整えるために、大出水時にも礫原植生が残存した箇所と礫原を特徴づける河床形状に着目し、これらの解析に適した洪水流の撮影場所を特定した。その上で、植生動態調査では、これまで行ってきた定置枠調査の継続と出水後の残存状況調査を実施した。これにより、攪乱強度の異なる出水から受ける礫原植生の動態が把握できた。流れの3次元解析では、出水時に冠水する礫原近傍の湾曲流を、水際の移動を考慮したラージ・エディー・シミュレーション法により再現した。シミュレーションの結果は、現地調査に基づく礫原植生の残存位置や河床材料の限界掃流力や、別途行っている2次元解析の結果とよく似た傾向を示した。洪水時の画像解析では、出水のたびに撮影を行い撮影の位置や方向の精度を高め、複数の流量時の出水状況を撮影することができた。 以上の成果から、異なる出水状況により変化する流況と河床抵抗の状況を評価することが可能となり、次年度以降に予定している、3次元モデルの解析結果と画像解析結果との照合および妥当性の検証、植生遷移の進行・消失過程に及ぼす力学的条件の影響解明が可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
植生動態の解析では、予定どおり解析対象の河原において定置枠調査を行った。9月に中規模の出水があり、2009年の出水以来まだ十分に回復出来ていなかった礫原植生が再び消失した。このため、攪乱後の分布拡大に関する手がかりはまだ得られていないが、これまでに把握していた出水とは異なる規模の洪水時にも礫原植生が残存するレフュージアの存在と位置を特定することができた。 流れの3次元解析では、出水時に冠水する礫原近傍の湾曲流のモデルの構築に成功した。出水時に浸水する蛇行部内岸の流況や掃流力分布が現地観測とよく似た結果が得られた。解像度は水平方向3m、垂直方向15cmで、植生調査の精度(定置枠:5m×10m)に見合った構造を再現できた。現地観測による砂礫の限界掃流力を考慮に入れることで、河床掃流力の定量的評価が行える可能性がある。異なる出水状況により変化する3次元的流況と河床抵抗の状況も評価することができ、植生への影響の予測に発展できることが分かった。 洪水時の画像解析については、異なる複数の流量の洪水時画像を取得することができた。ただ、植生動態と流れの3次元モデルの構築に適した画像撮影ポイントの特定に試行錯誤を要したほか水位計が流失したため、本年度、予備的な解析として、精度の良い画像解析は次年度に行うこととした。 以上の成果から、本年度の目的はおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
各解析とも、当初予定どおりそれぞれ、礫原植生の継続調査(植生動態の解析)、三方向からの出水時の動画撮影と流速分布の解析(洪水時の画像解析)、本年度構築した3次元モデルの妥当性の検証(流れの3次元解析)を行う。特に、洪水時の画像解析については、前二者の解析に欠かせないことから、水位計の購入・再設置と、暗闇時にも撮影可能な赤外線カメラの導入を試み、より高い精度での動画の撮影と、流速分布の解析に取り組む。以上の個別の解析結果をもとに、礫原植生の洪水時のレフュージアであり3次元解析を行う礫原を対象に、植生遷移の進行・消失過程に及ぼす力学的条件の影響を解明する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の予定どおり、大半は、現地調査補助や人件費(植生調査,動画撮影,水位計測,地形測量)にあてる予定であるが、一部は、流失した水位計を再設置するための物品費に回す。 研究分担者の旅費1万円分が次年度使用額として残った。現地旅費に充てる予定だったが、単独での現地調査を行わなかったため使用しなかった。翌年度の旅費として使用する予定である。
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Research Products
(14 results)