2012 Fiscal Year Research-status Report
洪水時の攪乱強度とレフュージアに着目した礫原植生の維持機構の解明
Project/Area Number |
23510298
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
浅見 佳世 兵庫県立大学, 自然・環境科学研究所, 准教授 (40464656)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中山 昭彦 (財)建設工学研究所, その他部局等, その他 (30237458)
藤田 一郎 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10127392)
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Keywords | 生物多様性保全 / レフュージア / 植生動態 / 画像解析 / LES / 礫原 / 攪乱 / カワラハハコ |
Research Abstract |
本研究の目的は、洪水の攪乱を受けてもなお残存する分布地(レフュージア)に着目し、植生動態と洪水時の攪乱の強度や頻度との関係から、礫原植生の維持機構を解明することにある。研究内容は三つに大別され、植生動態の解析,洪水時の画像解析,3次元数値解析(LES:Large-Eddy Simulation)からなる。 3ヵ年にわたる研究期間の1年目(昨年度)は、研究対象地である揖保川の河口から 24~27kmの区間にあるカワラハハコ群落成立礫原周辺を対象に、植生動態の追跡調査、出水時におけるビデオおよびインターバルカメラによる画像撮影、3次元LESモデルの構築をそれぞれ独自に行った。 本年度は、現地での調査を継続すると共に、現地の調査結果や撮影画像による3次元LES数値解析の検証を行った。特に、3次元LES解析法では、昨年度構築したモデルに対して、巨石の影響,河床粗度の分布,河道に繁茂する植生の流水への抵抗など、現地の立地条件の影響を詳細に反映するよう改良した.また既往の平面2次元解析結果,1次元解析の結果とも照らし合わせ,また現地調査を参照し,空間的,時間的に詳細な流れ情報を含むLES計算結果をもとに,カワラハハコ群落成立地に特有な水理学的特性を明らかにし,予想される地形的条件についても考察した。 以上の成果により、異なる出水状況により変化する湾曲部の流況と河床せん断の状況を評価することが可能となり、最終年年度に予定している、植生遷移の進行・消失過程に及ぼす力学的条件の影響解明および礫原植生の維持機構を解明が可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
植生動態の解析では、洪水時にも植生が残存したふたつの河原において、植生および個体群を対象とした追跡調査を継続した。昨年度は10数年に1度の規模の出水から3年目、中出水から1年目という植生の回復途上に相当し、調査の継続により植生動態の解析に必要な希少なデータが得られつつある。 洪水時の画像解析では、昨年度までに取得した画像および水位データをもとに、解析対象の河原周辺(湾曲河道の流入部,蛇行部中央,流出部)の洪水時の表面流速を求めた。 3次元LES数値解析では、昨年度に構築したモデルを改良し、巨石の影響,河床粗度の分布,また河道に繁茂する植生の流水への抵抗などの影響を詳細に反映できるように改良した。これにより、湾曲部に発生する強い2次流の力学的特性を反映したシミュレーションが可能となった。また、異なる出水状況により変化する3次元的流況と河床抵抗の状況も評価することができ、植生への影響の予測に発展できることが分かった。 以上の成果から、最終年度に行う「礫原植生の維持機構の解明」に必要な、植生動態と洪水による消失過程に関する基礎解析が整いつつあり、概ね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、洪水の強度や植生に対する影響を空間的・時間的に把握することにより、礫原植生の維持機構を解明することを目的としている。 この最終年度に行う全体総括に向けて、植生動態の解析においては、これまでの調査結果をもとに、出水の頻度や強度と植生遷移の進行や退行との関係を明らかにする。ただし、中規模あるいは大規模出水からの回復が一巡していないことが課題として残る。この点については、調査精度が異なるが、本研究課題開始前のデータを用いて推測する。 洪水時の画像解析の結果は、3次元LES流モデルの精度検証に欠かせない。3次元LES解析の結果からは、湾曲部の下流端に強い二次流2次流が見られ、これに伴って砂礫堆の形成に関与すると思われる強い底面せん断が発生することが示唆された。そのため、最終年度にも洪水時に画像撮影を補足的に実施し、3次元LES流モデルの精度検証の向上を図る。 3次元流の数値解析については、本年度までに、湾曲部に発生する強い2次流の力学的特性を反映したシミュレーションを可能とした。最終年度は、洪水時の画像解析で得られた詳細な実流速の分布をもとに精度検証を行い、群落維持のメカニズム解明に必要な複数条件での出水時の流況を再現する。 以上の解析結果をもとに、礫原植生の洪水時のレフュージアにおける植生遷移の進行・消失過程に及ぼす力学的条件の影響から、群落の維持機構を解明する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究代表者の所要額の内約20万円分が次年度使用額として残った。データ整理および解析にかかる人件費に充てる予定だったが、当該年度後半、病気療養のため未使用となった。翌年度、現地調査を始める7月までに、上記目的で使用する予定である。
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