2012 Fiscal Year Research-status Report
長期的シカ生息域における照葉樹林の生物多様性再生と外来種拡散に関する研究
Project/Area Number |
23510300
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Research Institution | Osaka Sangyo University |
Principal Investigator |
前迫 ゆり 大阪産業大学, 人間環境学部, 教授 (90208546)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
神崎 護 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (70183291)
鈴木 亮 筑波大学, 生命環境科学研究科(系), 研究員 (90418781)
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Keywords | warm temperate forest / cervus nippon / biodiversity / world heritage |
Research Abstract |
2012年度に実施した調査は次の通りである。 (1)本研究においてギャップ林冠に設置した4カ所の防鹿柵実験区における木本および草本植物の生物多様性のモニタリング調査(春,秋期),前回の科研費によって2007年に設置した外来種x鹿要因の7カ所における実験区におけるモニタリング調査(春,秋期)を実施した。(2)林床植生クリンソウ,イナモリソウ,ミヤコアオイほかの繁殖生態をシカとの関係でモニタリング調査しており,これについて春と秋期に調査を実施した。(3)国内外来種ナギの拡散速度解析において,ナギ数本を伐採し(2011年度)たため,今年度はその年輪解析を行った(4)以上の現地調査資料の解析を進めた。(5)春日山原始林における開空率を測定し,森林構造と更新とシカの影響との関係について解析した。春日山原始林およびナギの分布の中心である御蓋山においても開空率を測定し,解析した。 その結果,長期的にシカが生息する森林の生物多様性保全と外来種拡散のメカニズム解明にむけて,着実にデータを収集し,その一部の解析を行うことができた。照葉樹林の多様性再生において,生態系メカニズムから管理を提案する上において貢献する結果が得られた。この研究成果は,2013年4月にたちあがった奈良県春日山原始林検討委員会(前迫もメンバーの一員であり,本研究は委員会立ち上げの原動力となった)に還元している。学術情報は研究論文と社会の両方に公開している。 現時点で明らかにされたことは,防鹿柵が草本植物のサイズおよび繁殖能力において,一定の効果があった反面,閉鎖林冠においては,生物多様性の増大に大きな変化はなかった。外来植物(ナギおよびナンキンハゼ)の駆除においては,継続的(3年以上)なカットを行わなければ再生能力が高いことなどである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在,順調に目標達成に向けて動いており,著書,論文,学会およびシンポジウムにおいて研究成果の公開にもとりくんでいる。平成25年度は最終年度であり,目標に向けて成果を出すと共に,あらたな研究の発展にむけて,継続的に研究遂行する。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に従って,1)防鹿柵実験区におけるモニタリング調査を推進すると共に,解析を行う 2)林床植生の鹿の適応戦略について,継続調査を行うと共に,解析を行う,3)ナギの年輪解析を行い,拡散速度に関する基礎的解析を遂行する。 以上を統括し,シカと多様性と外来種に関する,当初の目標を達成する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
最終年度の経費は前年度の未払い分などを支払い,それぞれの研究者の費用配分は希望通りに行うことができた。最終年度は,現地調査および総括のために必要な消耗品および研究補助謝金として使用する。B-Aが181,062円であるが,これは前年度に実施した防鹿柵費用の未払い分に充当させる。そのほかについては,予定通り,予算執行する。
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