2012 Fiscal Year Research-status Report
ミャンマーにおける仏教布教の政治・社会的展開:同化政策・市民活動
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23510306
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
土佐 桂子 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (90283853)
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Keywords | 布教 / 同化政策 / 市民運動 / 上座仏教 / 宗教人類学 / ミャンマー |
Research Abstract |
本研究は、ミャンマーにおいて国家政策として推進されている上座仏教の布教活動に注目し、その政治的、社会的展開を明らかにすることを目的としている。具体的には第一に、前軍事政権が政治の宗教利用に傾斜し、現政権下でもその方向性に対して特に修正はされていないという認識に立って、宗教政策の変遷を調べること、第二に、軍事政権下で設立された仏教布教局に着目し、この局を中心に行われる辺境地の少数民族の仏教布教を、同化政策と福祉という観点から明らかにすることを目指している。 平成24年度の計画として下記の2つを挙げており、いずれも順調に達成した。 1.文献収集・読解・分析:昨年度に引き続き、仏教布教活動に関わる文献資料の収集(ヤンゴン、マンダレー)サンガ長老会議報告書のコピーに加えて、各地での調査で得られる地域における政府統計資料、宗教関係の資料を収集した。 2.現地調査・布教地域んでの調査:9月に、昨年度に調査許可を取得したため、地方調査を継続した。また、乾季にしかいけない場所が多いため、今後は、日本の業務上調査のしやすい8月(雨季)に調査可能な地域を探すことが課題となる。今年度はシャン州ラショを選択し、合計3カ所の仏教布教調査を行った。 (1)シャン州ラショ市周辺(2012年8月):キリスト教徒なども多いなか、ラショ市近辺の仏教布教僧院を中心に、学校併設、孤児院創設の事例などの調査を行った。(2)カヤー州ロイコー周辺(2012年3月):これまで入りにくかったカヤー州調査で、キリスト教、精霊信仰などを信仰するカヤン(パダウン)族、パオ族の村に入って活動中の仏教布教僧侶などにインタビューを行った。(3)シャン州タウンジー周辺:今回は時間が限られていたため、パオやシャンの布教僧院などの調査を行った。宗教政策については、ドイツの日本研究社会科学学会の招待により発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ミャンマーの政治情勢が急激に変化しつつあり、政府の調査許可が得られやすくなったこともあり、特に地方での調査が順調に達成できた。とくにこれまで外国人の立ち入りが禁止されていたカヤー州での調査を行え現地の宗教省役人の協力も得られたことは、非常に貴重な成果につながると期待できる。また研究成果も英語で1本、海外での学会から依頼を受けての発表、日本のジェンダー史学会報告等、順調に成果を発表したため、当初の計画以上に進展したと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年に引き続き、政治状況は緩和されつつある。ただし、これまでの経緯から考え、この状況が必ずしも安定して続く保証はないため、状況が許すあいだに、可能な限り、地方での調査を集中的に続ける必要があると判断している。 それもあって、昨年度は雨季にも飛行機、バスなどで訪問の可能な個所(シャン州ラショ)の調査を行い、乾季(3月)にはさらに2か所での調査を行ったので この方針で、最後まで調査を続ける予定である。とくに、雨季の調査場所の選定が課題である。 一方、成果発表も続けて行い、可能な限り、得られたデータをまとめる予定である。そのために、本務校を核として研究会を組織している研究会での報告を基盤として、従来と同様、国内外の学会、研究会等での報告を試み、刊行論文での成果も完成させる予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上述の通り、許可が出ているあいだに、地方の調査を重点的に行う必要があるため、次年度は最後であるが、調査に特化したい。一度目は現地の雨季である8月から9月に3週間程度、二度目は乾季にあたる12月から2月のあいだに10日から2週間程度を予定する。また行き先については、雨季は行きやすいカレン州パアン市近辺を予定し、乾季はチン州調査の可能性が出ているので、なんとか行いたいと考えている。 さらに、成果発表の一端として、ヤンゴン大学人類学科との国際会議を予定しており、そこで成果をまとめ、現地人類学者の意見、批判を受け、研究の充実、深化を図る。また、組織している研究会では、関連テーマの研究者も招待し、その報告などを通じて、研究の深化を図る予定である。
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