2013 Fiscal Year Annual Research Report
ミャンマーにおける仏教布教の政治・社会的展開:同化政策・市民活動
Project/Area Number |
23510306
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
土佐 桂子 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (90283853)
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Keywords | 布教 / 同化政策 / 市民運動 / 上座仏教 / 宗教人類学 |
Research Abstract |
本研究計画は、ミャンマーにおいて国家政策として推進された上座仏教の布教活動に着目し、その政治的社会的展開を明らかにすることを目的としている。前軍事政権が正統性原理、またナショナリズムの核として仏教を重視したこと、現政権下においても、その方向性が特に修正はされていないという認識に立ち、宗教政策の変遷を調べることを第一の目的とした。第二には、軍事政権下で成立された仏教発展普及局に着目し、この局を中心として行われる辺境地の少数民族の仏教布教を同化政策と福祉という観点から明らかにすることを目指した。一方、初年度に宗教省から正規の調査許可が得られた。科研の当初の目的としては、政治情勢を鑑み、初年度調査の結果に応じて、調査のできる範囲で都市近辺での調査を行うことも視野に入れていたが、許可が得られたこともあり、辺境地の仏教布教活動を観察し、多様な展開のあり方を理解することに主眼を置くことにした。したがって、平成25年度も当初計画を若干変更し、最終年度ではあるものの、許可が有効なうちに地方の調査を敢行することとした。この方針に従い、9月(雨季)にカレン州パアン郡からミャワディ郡、フラインボェ郡の調査を行った。この地域では仏教布教運動は、現状ではキリスト教徒に対してというより、仏教徒対象の仏教運動につながることが多い。一方、2月(乾季)には山地のチン州ハカ郡、ティーディン郡、ファラン郡の調査を行った。チン州はキリスト教徒の多い地域で、仏教徒居住は限られ、他の地域以上に政府や他のビルマ系住民と結びついて展開している。こうした地方の現状に応じた布教活動の展開に触れることができたのは大きな成果であると考えている。こうした成果発表の一端として、ヤンゴン大学人類学科とのジョイント・セミナー(予備)を9月に、正規セミナーを2月に行い、多くの現地人類学者と意見交換を行った。
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