2014 Fiscal Year Research-status Report
ブータンの農村社会内における経済的格差の要因:稲作地域と畑作地域の比較研究
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23510313
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
上田 晶子 名古屋大学, 国際開発研究科, 准教授 (90467522)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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Keywords | 格差 / 経済事情 / ブータン / 文化人類学 / 農村 / 国際協力 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、平成23年度から25年度にブータンで行った現地調査で得られた情報をまとめ、分析することに焦点をあてた。その中で、ブータン西部地区について、さらに追加の情報があると、分析の内容がより一層深められる部分があることが明らかになった。それは、特に、ウォンディ・フォダン県における夏季と冬季の季節移動による生業のあり方と、そのような季節による移動が農村内部の経済格差にどのような意味をもっているかという点である。 道路網へのアクセスが比較的たやすい同地域における季節移動は、バス、トラクター、トラックなどを用いて行われることが多いこと、また、その生業のあり方は、季節によって、一方の土地に軸足がおかれたものであると同時に、年間を通じて、主に農作業の都合により、世帯構成員はかなり頻繁に両方の土地(と家)の間を行き来していることが明らかになった。多くの場合、この地域では、夏の土地は畑作地、冬に主に居住する場所では稲作を行っていることが多く、季節による移動をおこなう世帯は、その両方を所有している。一方で、一方の地にのみ、土地を所有している世帯もあり、その多くは、経済的に恵まれていない。 本研究は、畑作地域と稲作地域とに分けて、農村社会内の経済格差の程度とその要因を探ることを目的としたものであるが、以上のような状況から、稲作地域と畑作地域を分けて比較することには、注意が必要であることが明らかになった。しかし、土地の賃借の条件の違いや、最近の換金作物の導入による土地あたりの収入の差は存在しており、畑作地と稲作地を分けて議論することに注意をはらいつつ、土地所有の形態や、カネ、労働力の動きに注目しつつその比較をしていくことには、意義があるという結論が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は、年度の途中で研究代表者が所属先を変更し、新しい業務との兼ね合いで、予定していた研究発表のワークショップ等の開催を延期せざるを得ない状況となった。補助事業期間延長をした平成27年度は、これまでの研究成果の発信を主に行う。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、今までの研究成果の発信を重点的に行う。特に、その中でも、現地ブータンでの研究成果の発表を重視する。調査のうえで、重要なパートナーとなったブータン農業省をはじめ、ブータン王立大学の農業カレッジ、また、関係する現地援助機関等とも、研究の成果を共有し、村落社会内の経済格差を緩和するための具体的な政策や方針の議論を行う。
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Causes of Carryover |
平成26年度は、年度の途中で研究代表者が所属先を変更し、新しい業務との兼ね合いで、予定していた研究発表のワークショップ等の開催を延期せざるを得ない状況となった。補助事業期間延長をした平成27年度は、これまでの研究成果の発信を主に行う。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度は、これまでの研究成果の発信を主に行う。特に、調査地への成果の還元の意味から、ブータンでの発表を重視する。そのほかに、英国をはじめとする国外での発信のほか、国内でも発表を行うとともに、関連する学術雑誌等に積極的に投稿を行う。助成金の使用は、旅費や会場の借り上げ、英文論文の校閲にかかる費用、印刷と出版にかかる費用等である。
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Research Products
(6 results)