2011 Fiscal Year Research-status Report
南太平洋における公共圏と親密圏の生成に関する文化人類学的研究
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23510315
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
吉岡 政徳 神戸大学, 国際文化学研究科, 教授 (40128583)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | ヴァヌアツ共和国 / ポートヴィラ / 公共圏 / 親密圏 / 宗教活動 / カヴァ・バー |
Research Abstract |
本年度は、研究実施計画にしたがって、ヴァヌアツ共和国の首都、ポートヴィラでフィールドワークを実施した。ヴァヌアツは英仏共同統治という経験をもっており、さまざまなものがイギリス系とフランス系に分かれた形で植民地統治がおこなわれてきた。都市づくりにおいてもそうした対立が反映されているが、首都であるポートヴィラは、コロニアル・タウンとして成立したこともあり、イギリス系とフランス系の対立が直截的に出現しているところであった。しかし現在のポートヴィラでは、伝統的な島の対立、植民地統治によって持ち込まれた対立を超えたところに新たなまとまりが生み出されている。そうした新たなまとまりの中で、宗教的なまとまりは親密圏や公共圏を考える上での起点となる。ヴァヌアツは、ほとんどがプレスビテリアン、アングリカン、カトリック教徒であったが、近年、モルモン教、エホバの証人、そしてバハイ教などのマイナーな教団が活動を活発に展開している。これらの宗教活動は、マイナーであるがゆえに、親密圏としての空間を提供するとともに、それを起点とした公共圏への発展を内包したものであるといえる。 一方、ヴァヌアツの都市部では、アルカロイド系の伝統的飲料であるカヴァを飲ませる店、いわゆるカヴァ・バーが隆盛を極めているが、西洋世界のカフェが公共圏の起点となったように、メラネシアのカヴァ・バーが、メラネシア的な公共圏へのまとまりを作る出す可能性を今回見出すことができた。これは、次年度行う地方都市ルガンヴィルでのフィールドワークでの方向性をもたらす重要な点であり、メラネシア的な公共圏の探索において、大いに意義のある議論となると考えられる。 なお、研究実施計画にもとづいて、国内における南太平洋地域研究者と会合を持ち、公共圏、親密圏概念の南太平洋への適用について議論した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の目的は、南太平洋地域独自の公共圏、親密圏の在り方を解明することである。そのために、具体的にはヴァヌアツ共和国の首都・ポートヴィラと地方都市であるルガンヴィルでのフィールドワークを実施している。本年度は、ポートヴィラでのフィールドワークを実施し、コロニアル・タウンとして成立した首都における公共圏、親密圏の在り方を研究することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、購入を予定していた物品をすべて購入し、予定していたフィールドワークも実施したが、物品を安く購入することができたうえ、航空運賃も低額だったため、次年度使用額が生じた。これを使って、次年度は、ポリネシアのクック諸島でのフィールドワークを実施する。 当初の計画では、予算の関係でメラネシアのヴァヌアツ共和国だけでのフィールドワークを予定していたが、南太平洋という領域を考えるときに、ポリネシアを視野にいれることは必要であった。したがって、メラネシアでの研究を補足して、南太平洋における公共圏、親密圏を論じるために、ポリネシアでの調査を行う。なお、当初からの予算では、予定通り、メラネシアでのフィールドワークを中心とした研究を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度で得られた成果をもとに、次年度は以下の計画で研究費を使用する。1)ヴァヌアツ共和国の地方都市ルガンヴィルを中心に2週間程度のフィールドワークを実施する。ルガンヴィルは、第二次世界大戦時にアメリカ軍が基地の町としてつくったところであり、アメリカ軍が引き上げてからはメラネシアン・タウンとして発展してきた。島単位の住み分けもポートヴィラよりも強く、より共同体の仕組みが村落に近い形で存続しているように見えるが、こうした中にグローバルな波が入り込むことにより都市空間の在り方は劇的に変貌を遂げている。ポートヴィラとは異なる公共圏、親密圏の在り方が明確になると考えられる。2)日本における南太平洋地域研究者らと会合をもち、南太平洋におけるグローバリゼーションの様相や、都市文化形成について議論する。3)公共圏、親密圏、グローバリゼーション、都市文化論に関する文献を収集する。
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Research Products
(1 results)