2013 Fiscal Year Research-status Report
南太平洋における公共圏と親密圏の生成に関する文化人類学的研究
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23510315
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
吉岡 政徳 神戸大学, その他の研究科, 教授 (40128583)
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Keywords | ヴァヌアツ / ポートヴィラ / 北部ラガ / 村落共同体 / 公共圏 |
Research Abstract |
本年度は、研究実施計画にしたがってヴァヌアツでの追加調査を行った。特に首都のポートヴィラを中心に都市部の補充調査をおこなった。首都に居住する北部ラガ(ペンテコスト島北部)の人々の形成する人間関係、活動圏、また、北部ラガ出身者が経営者となるカヴァ・バーに集う人々の創りだす空間などを中心に調査を行ったが、彼らの故郷となるペンテコスト島北部との回廊を明確に把握するため、本年度は、ペンテコスト島北部でのフィールドワークも実施した。昨年の実績報告書で、「携帯電話の圧倒的な普及で、出身の島の住人と瞬時に連絡が取れるようになったため、都市的な状況と村落的な状況が極めて密に共有されるような状況が出現している」と報告したが、都市部と村落部の差異は急激になくなりつつある現実をみることができた。つまり、かつては都市部に村落部の様式を持ちこむことで「伝統」を変形させつつも村落との回廊を保っていたが、近年は、そうした変形された伝統が逆に村落部に持ち込まれることで、村落部が都市化し、両者が混淆した状態の文化が生み出されているといえる。そうした流れの中で、都市部における同じ故郷出身者が創りだす新たな「共同体」は、村落との太い回廊を情報が高速で飛び交うことにより、社会学が「公共圏」の対極に位置づけて来た「村落共同体」とは異なる共同体を構成してきている。そしてそれは、西洋的な基準から導き出された「公共圏」としての性質と「村落共同体」としての性質を兼ね備える、新たな「共同圏」として成立してきていると言えよう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
メラネシア的な公共圏の在り方を追求してきたが、今年度の調査研究により、村落共同体と公共圏の対立を超えた新しい共同圏の在り方を見出すことができた。その意味で、研究計画にそって順調に進展しているといえるが、今年度、故郷の島との回廊を調査するなかで、首都のポートヴィラ在住者については十分に調査が行えたが、第二の都市ルガンヴィルについては、若干不十部であったのが悔やまれる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度で得られた成果をもとに、来年度は、再びヴァヌアツ共和国での追加調査を実施する。今年度不十分におわったルガンヴィル在住の北部ラガの人々と、故郷の村落との回廊を見つめることで、今年度確信をもったメラネシア的な公共圏の在り方を、さらに詳細に検討する。同時に、国内のオセアニア研究者などとの研究打ち合わせを十分に行うことで、年度末の報告書作成に臨む。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
海外出張費が予定よりも安かったため。 今年度の国内出張、成果の出版費の一部にあてる。
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Research Products
(5 results)