2012 Fiscal Year Research-status Report
東南アジアの熱帯林保全と地域社会の貧困緩和が実現可能な気候変動対策モデルの構築
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23510316
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
原田 一宏 兵庫県立大学, 環境人間学部, 准教授 (00372087)
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Keywords | 気候変動政策 / REDD+ / 森林保全 / 地域住民 / 国立公園 / 東ジャワ / インドネシア |
Research Abstract |
今年度は今までの研究対象地での情報収集を継続して行うとともに、特に、インドネシアのREDD+の法制度に関する情報を重点的に収集した。 2010年からインドネシアのREDD+の政策には、ノルウェー政府の意向が反映されるようになった。これを契機にインドネシアの気候変動政策はREDDからREDD+へと移行し、ノルウェー政府の意向がインドネシア政府の主導するREDD+の政策の方向性を決定づけるものとなっていった。 このような気候変動政策の一つとして、2012年6月には、REDD+国家戦略が完成した。国家戦略では、インドネシアにおけるREDD+のビジョンとして、人々の繁栄のために天然林や湿地林を国の自然資源として持続的に管理することが掲げられており、それを実現するために、森林や湿地林の管理組織の機能を促進すること、法の施行強化のために法制度を改善すること、森林や湿地林の資源管理能力を改善することを使命として掲げている。また、この国家戦略では、地域住民の土地所有権や住民も含んだ様々なステークホルダーの参加について触れられている。さらに特記すべきこととしては、この国家戦略がセーフガードについて触れている点である。社会セーフガードとして、森林資源に依存しながら生活している先住民や地域住民を保護すること、彼らに便益を供与することなどが明記されている。 以上のように、インドネシア政府は気候変動に関する今後の方向性を法律と国家計画によって明確に打ち出していること、特に、新たに制定されたREDD+国家戦略には、REDD+プロジェクトの実施によって、地域住民の権利が剥奪されることを防ぐために、先住民や地域住民の土地所有権、彼らの協議への参加と合意、地域住民の権利に関わるセーフガードについて詳述されていることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、インドネシアのREDD+に関連する国家戦略や法制度といった国内動向を把握するとともに、3月にインドネシアを訪問し、共同研究者が主となり6月に実施した世帯調査の結果について議論した。これらの研究成果の一部は、投稿論文(日本語)として学術誌に投稿済みである。 マダガスカルに関しては、マダガスカルにおけるREDDプロジェクトを取り上げて実施した調査結果をまとめたものが外国の学術誌に掲載された。 このように、今年度は当初の予定通りに研究成果を学術誌としてまとめ、研究目標をおおむね達成することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
インドネシアの調査対象地に関しては、引き続き情報を収集するとともに、研究対象としているプロジェクトが進展し、さらなる有益な情報が得られれば、投稿論文(英語)としてまとめる。さらに、本科研で今まで継続的に調査を実施してきた、インドネシアのREDD+の動向やプロジェクトの状況について、マダガスカルなどと比較しながら総まとめを行う。 また、2013年3月に出版予定の森林に関する書籍の執筆依頼を受けている章の中で、世界的な気候変動政策や森林保全政策の動向の中での、本科研での研究成果の位置づけについてまとめる予定である。 また、インドネシアの比較対象国として、オーストラリアやブータンにおける先住民・地域住民の参加による森林管理政策や先住民・地域住民の土地所有権について調査を実施する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
継続調査中のインドネシアのREDD+政策の動向や、REDD+プロジェクトの状況についての情報を収集するために研究費を使う。この研究費には、必要に応じて、代表者が現地に赴く経費も含まれる。それ以外には、比較対象国であるオーストラリアやブータンでの現地調査のための旅費や必要経費に使う。 また、国内での情報収集のための研究打ち合わせ(旅費やしょうへい費)や、関連するシンポジウムなどへの参加に必要な経費(旅費や参加費)に使う。それ以外の次年度予算は、研究に必要な物品の購入費、英文校閲や論文投稿の経費、報告書等の作成費に使用する。
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Research Products
(6 results)