2012 Fiscal Year Research-status Report
中国共産党と人民代表大会選挙制度の変革-2011年選挙の実証研究
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23510320
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Research Institution | Tokiwa University |
Principal Investigator |
中岡 まり 常磐大学, 国際学部, 講師 (80364488)
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Keywords | 国際研究者交流 / 中国 |
Research Abstract |
本研究の目的は、中国共産党が指導する選挙過程と選挙民の投票行動を分析し、選挙制度を通じた共産党統治の変容の可能性を明らかにすることである。 平成24年度は、前年度に実施し結果をまとめた「北京市選挙民調査」と、付随して行った独立候補(政党や団体の推薦によらない立候補者)に対するインタビュー調査の結果を分析し、学会および国際ワークショップでの発表、国際ワークショップの開催、ペーパーの執筆を行った。 今年度の研究の成果としては大きく三つ挙げられる。前者二つはアンケート調査の結果得られたものであり、残りの一つはインタビュー調査から得られたものである。第一点は、実質的な選挙民登録率の低下とそれに伴う実質投票率の低下が明らかになったことである。第二点は、選挙において直接自ら投票した人々の特徴を、ロジスティック回帰分析を用いて析出した結果についてである。先行研究では、現体制(共産党)の恩恵をこうむっている既得権益層が投票し、現体制に対する支持を表明しているとされてきたが、分析の結果、投票には、政治的義務感、人大代表の実績への認知度という要因が影響することが明らかになった。独裁政権下にありながら、投票者が有権者としての意識を持ち始めていることを示しているといえよう。第三点は、立候補者たちの活動の影響が広範囲に及ぶにつれて、党を中心とする選挙管理当局が暴力的措置を取るようになったことが明らかになったことである。これにより、多元化する市民の利益表出要求に対して共産党の適応能力が低下していることがわかる。 中国の直接選挙について共産党の統治の側から分析した研究はないため、オリジナリティのある研究成果となっていると思料する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度には当初予定していた学会での報告に加えて、常磐大学・慶應義塾大学現代中国研究センターと国際ワークショップ「中国の人民代表大会制度とその選挙研究」を共同開催し、人民代表大会と選挙制度の研究において著名な何俊志・復旦大学副教授、メラニー・マニオン・米ウィスコンシン大学マディソン校教授らにも参加していただき、研究成果を発表し意見をいただくことができた。また、科学研究費補助金・基盤研究(A)「調和社会の政治学-調和的な発展政策の形成と執行の総合的研究」(研究代表者:高原明生東京大学大学院法学政治学研究科教授)プロジェクト主催の2012年度「調和社会」国際シンポジウムにも参加し、インタビュー調査の分析を基にした発表を行い、中国からの専門家や人権派弁護士、マスコミ関係者からの意見をいただくことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、予定通り研究成果をまとめ、論文を作成する。昨年度はアンケート調査の結果を中心にアジア政経学会全国大会での発表を行ったが、今年度は新たにインタビュー調査の結果明らかになった共産党の適応能力の低下について、アジア政経学会全国大会において発表を行うことを予定している。そこで、年度末には二つの論文を完成させることを目標とする。 また、昨年発足した習近平体制後の変化の有無を知るため、8月に北京に出張し、現地での情報収集を行う。最終的に論文を執筆するに当たり、雷タオ・北京市社会科学院研究員と孫龍・中国人民大学副教授と日本において意見交換を行うことを予定している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は次年度使用額が149,999円生じた。これは、補足調査費を計上していたが、調査結果が十分なものであったため、補足調査を行わず、国際ワークショップ開催と招聘費用に充当した結果である。 次年度は、研究成果を報告するため、学会への参加を行う旅費と調査結果の補足のための出張費用、招聘費用と最終的な報告書作成の費用を計上している。
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