2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23510321
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Research Institution | Dokkyo University |
Principal Investigator |
江藤 双恵 獨協大学, 国際教養学部, 非常勤講師 (50376828)
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Keywords | 国際情報交換 / タイ / 家族 / 子育て / 家族政策 / 女性 / ジェンダー / 地方自治体 |
Research Abstract |
前年度に引き続きコンケン県内の地方自治体、および北部地方の地方自治体にて福祉的施策を包括的に担当する「コミュニティ開発専門職員」へのインタビューを行った。彼/彼女らの担当事業は、経済分野と社会分野に大別できる。経済分野では所得創出プログラム等、社会分野で は公的扶助等の福祉事務以外に、地域の課題に即した住民啓蒙プログラム等がある。本年度の調査の結果、「コミュニティ開発専門職員」が複数雇用されている自治体では、経済分野と社会分野の役割が職員によって明確に分担されていることがわかった。 本年度新たに調査を行った北部(チェンマイ県、チェンライ県、ラムパーン県)の地方自治体の事例では、既存の女 性グループの支援、新たなグループの設立、一村一品製品生産グループなどへの資金提供に加えてDV対策のためホットライン事業なども見られた。その他、「女性と家族に関する優良地方自治体」 として表彰された自治体の中には、DV抑止プログラムや「家族とジェンダー」プログラムを実施するものもあった。 いずれの事例からも「子育て支援」を全面にかかげたプログラムは存在しなかったが、収入創出や家族の強化という名目で間接的に子育て支援の意義を有することは確かだが、自治体側にそのような期待があるかどうかは不明なままである。子育て支援の課題を理解するための鍵となる女性の位置づけについても相変わらず曖昧なままであり、施策によっては女性の負担を増強すると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の課題は、タイにおける子育て中の人々が直面する問題を明らかにし、子育て中の人々を支援するための実践的・政策的課題 を多角的に検討することにある。平成23年度に引き続き、平成24年度も当初の予定通り東北地方コンケン県において、1、農村部で子育て中の人々がど のようなニーズを持っているのか、2、実際に地方自治体によって立案・運営されている「子育て支援」プログラムの現状について調査を実施した。 さらに平成23年末の洪水災害によって断念した北部地方の調査を8月には実施し、チェンマイ県、チェンライ県、ラプパーン県で実施されているプログラムの内容も明らかになった。 タイの地方自治体によって実施されている包括的な福祉政策は、東北地方でも北部地方でも同様に、収入創出=経済的エンパワメント一辺倒だった農村女性対象の施策に、その地域で生活する女性の関心事にマッチした福祉的含意、すなわち高齢者の世話や子育てを支援する場を提供する契機とはなっている。家族開発センタープログラムなどの住民啓蒙事業は、子どもの健康や子育てに関する悩みを相談する機会となったり、子どもとのコミュニケーションを改善するきっかけになったりしている。 しかし、一方で、女性の負担を増強している側面もみられた。それは、ほとんどのプログラムがこれまで女性が担ってきた役割を前提としており、それらの転換を迫る視点をもたないことによる。わずかながら、家族内での固定化されたジェンダー役割を転換するためのプログラムが実施され始めているとはいえ、未だこうした視点が地方に浸透するには不十分な状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、現在実施されている地方自治体による福祉的なプログラムが、固定的なジェンダー役割を転換させる視点を欠いている限り、子育てに関わる女性の負担はかえって増大すると結論づける方向で最終的なまとめを行う予定である。地方自治体の機能向上により、地方の実情に即したプログラムが実施されるようになったにもかかわらず、女性たちが依然として三重、四重の役割を担って疲弊している状況を改善するにはどのような施策が必要か、政策提言につながる分析を実施したい。 今年度は最終年度にあたるため、これまでに獲得した資料、インタビューデータをさらに綿密に分析するとともに本研究終了後の課題も合わせて検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1、収集資料、インタビューデータ整理、調査地や被調査者の概要など報告書附属資料作成のためのアルバイトを雇用する。資料のほとんどがタイ語であるため、タイ語と日本語、および英語の翻訳能力を有すアルバイトを雇用する。 2、国内で実施される学会、研究会に参加する。 3、学会発表、報告書印刷代、コピー代、データ保存のためのメディアを購入する。
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Research Products
(1 results)