2011 Fiscal Year Research-status Report
環大西洋におけるカルヴァン主義諸派のディアスポラ形成とピューリタン植民地の展開
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23510322
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
増井 志津代 上智大学, 文学部, 教授 (80181642)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ピューリタニズム / ニューイングランド / 環大西洋 / 植民地時代 / イングランド / オランダ / 印刷文化 / フランス |
Research Abstract |
ハーヴァード大学を拠点とした資料収集と調査を特に重点的に行った。研究協力者David D. Hall教授と意見交換を頻繁に行うことができた。歴史学部David Armitage教授、Joyce Chaplin教授、英文学部Werner Sollors教授、John Stauffer教授、ボストン大学英文学部Anita Patterson教授とも複数回意見交換を行った。ニューヨーク公立図書館では奴隷貿易とキリスト教会との関係についての資料にあたった。夏期、フランス国立図書館(パリ)、大英図書館(ロンドン)での資料調査を行った。この調査で、プロテスタント移住者ディアスポラにおけるstranger churchの働きの重要性が浮かびあがって来たため、研究の方向が当初のde Bryやユグノー画家Le Moineに関する調査から移住者共同体とその商業活動へと移行した。9月以降はボストンでピューリタン商人についての調査を行い、「ピューリタン商人と『カルヴァン主義の倫理』再考ーロバート・キーン『アポロジア』を中心に」(未発表)と題した論文をまとめた。さらにジョン・ハル、サミュエル・シュアールの日誌他の資料を集めた。 イングランドではオクスフォード大学クライスト・チャーチ・カレッジで開催された教会史学会(Ecclesiastical History Society)年次大会に参加し、英国側研究者のカルヴァン主義研究の傾向を調査できた。環大西洋研究をより複眼的に行うために、米国以外の研究動向を知ることは大切であると思われる。さらにワシントンD.C. フォルジャー・シェイクスピア図書館で開催された欽定訳聖書400周年記念学会"An Anglo-American History of the King James Version"に出席し、英米側研究者それぞれの研究動向を学ぶことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
長期の海外滞在と調査旅行が可能であったため、平成23年度の計画はおおむね実行することができた。ハーヴァード大学に長期滞在し、資料調査を行い、予定より多くの研究者と意見交換、交流を行うことができた。同大学ではアメリカ宗教史研究者・院生によるNARC(North American Religions Colloquium)に参加し、様々な視点からの研究テーマや方法を学ぶことができた。同大学を中心とした体制が充実していたため、学外アーカイヴに通うことは今回はあまりなかった。 ニューヨーク公共図書館は複数回訪ねることができたものの滞在日数が限られ、18世紀奴隷貿易に関する史料が特に豊富な分館には行くことができなかった。英仏での調査は行ったが、改革派研究のために重要な場所であるオランダの調査は行っていない。また、ジュネーヴ調査は、Hall教授によると特に今回の研究には必要ないだろうとの意見であった為、行わなかった。オクスフォードでEcclesiastical History Societyの年次大会に出席できたこととフォルジャー・シェイクスピアにおけるKJV学会出席により様々な研究課題に接することができたのは予想以上の収穫であった。現地に赴くことで、得られる情報は多く、現地調査の重要さをあらためて確認した。今年度は、複数の場所で順調に調査を行うことができ、収穫の多い一年となった。また、東洋書林よりAtlas of the Transatlantic Slave Trade (Yale UP)の翻訳依頼がありこれをほぼ訳し終えた。これにより18世紀奴隷貿易とボストン・ピューリタン商人の関係についての調査のガイドラインを得ることとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度の各地での調査旅行が予想以上の成果を挙げるものとなったので、平成24年度も現地に赴き資料収集と調査を実施したい。研究交流も引き続き行い、意見交換を継続したい。18世紀の大西洋三角貿易、特に奴隷貿易とピューリタン商人の関係も新たな研究トピックとして加わったので、この調査も続けたい。また18世紀の環大西洋宗教思想研究においては、大陸敬虔派(Pietists)への注目が欠かせないことが研究過程で次第に明らかになってきた。このためにはさらにボヘミア、ドイツ等への調査旅行も必要になってくるが、これに関してはできる範囲での拡大にとどめ、限られた年度内で成果をまとめることをまず目標としたいと思う。平成24年度は、外部に対する研究の公表も行って行きたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の研究費使用はおおむね計画通りであるが、現地調査の必要に応じて人件費・謝金にあてている経費の一部を旅費に充当する可能性も生じると思われる。
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Research Products
(3 results)