2011 Fiscal Year Research-status Report
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23510323
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
川島 緑 上智大学, 外国語学部, 教授 (50264700)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | フィリピン / イスラーム / ウラマー / 思想 / ネットワーク / 写本 / 東南アジア / ミンダナオ |
Research Abstract |
これまでに収集・調査したラナオ地方のイスラーム書刊本87点のリストを作成した。10月19-26日、海外協力者Fathurahman氏を招聘し、研究打ち合わせと研究会を開催した。 2月23日-3月6日、海外協力者3名(Fathurahman、Nurtawab、Al-Aman各氏)とともに、フィリピンのマニラ市と南ラナオ州マラウィ市において現地調査を実施し、(1)大統領博物館・図書館所蔵「バヤンのクルアーン」、(2)ムハンマド・サイド・コレクション、3)アフマド・バシール・コレクションの調査、写真撮影を行った。また、市場やイスラーム書店などでイスラーム書刊本十数点を収集した。さらに、他の海外渡航の機会を利用して、ニューベリー図書館(シカゴ)所蔵イスラーム写本2点、インドネシア国立図書館ジャカルタ)所蔵イスラーム写本1点の調査・複写を行った。マラナオ語、タウスグ語文書3点の翻字、翻訳も実施した。 これらのデータを海外研究協力者と共有し、共同研究体制を確立し、内容の解析とリスト作成作業を開始し、以下の研究を実施した。(1)「バヤンのクルアーン」の来歴、欄外注、装飾に関する研究、(2)ミンダナオ出身のウラマーが18世紀後半にアチェで執筆したイスラーム写本(インドネシア国立図書館所蔵)に関する基礎的研究、(3)アラビア語・マラナオ語の預言者ムハンマド讃歌(ダンサラン学院ガウィン研究センター所蔵)の内容と挿絵に関する研究、(4)ラナオ地方の初期イスラーム出版物(1930-50年代刊行)に関する研究、(5) 20世紀初頭サンボアンガのイスラーム指導者ハッジ・ヌーニョらのオスマン帝国駐米大使あて請願に関する研究。 これらの成果を著書・論文、国際シンポジウム、研究会、講演会等で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに収集したイスラーム書の予備的目録作成に関しては、ラナオ地方で収集したアラビア文字表記イスラーム書については、当初の予定通り達成することができた。しかし、ラナオ地方以外のイスラーム書、および、ラテン文字のイスラーム書については、まだリスト化が完成していない。 マニラ首都圏と南ラナオ州マラウィ市でのイスラーム収集と調査は予定通り達成することができた。しかし、マレーシア・サバ州での調査は、事前準備を十分に行ったうえで実施する必要があり、本年度はフィリピンでの調査研究に多くの時間と労力が必要であったため、次年度以降に実施することにした。 海外研究協力者の招聘と研究打ち合わせ、研究会開催、データの共有については、当初の計画通りに達成し、今後、本格的に国際共同研究を推進していくための信頼関係を確立し、研究基盤を共有することができた。これは、研究初年度にあたる本年度のもっとも重要な課題であったので、これを達成できたことは重要な成果といえる。 重要資料の翻訳・内容解析については、ラナオ地方の数点のイスラーム書や文書に関して実施した。フィリピン諸語やマレー語、アラビア語などの翻訳・内容解析は、各言語・各分野の専門家との共同作業で行う必要があり、当初の予測を上回る多くの時間と労力が必要であるため、多くの資料を翻訳・内容解析することができなかったが、着実に研究を進展させることができた。 以上を総合的に判断すると、当初の研究目的をほぼ予定通り達成することができたと評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
ラナオ地方のイスラーム書の網羅的収集・調査を優先させ、第2年度はこれに時間と労力を集中させる。これと並行して、コタバト地方、および、マレーシア・サバ州タンパソク周辺での調査準備を行い、第3-4年度にこの2か所での資料収集・調査を実施する。 第2年度に、南ラナオ州マラウィ市において、ミンダナオ国立大学ファイサル王イスラーム学アラブ・アジア研究所の協力により国際ワークショップを開催し、研究成果の中間報告を行い、現地研究機関に成果を還元するとともに、現地研究者からのフィードバックを得て、それらを今後の研究活動に活かす。 関連分野の海外の研究者との連携をさらに拡大・深化させ、必要に応じて、海外研究協力者を追加する。 すでに着手しているラナオ地方のイスラーム書の目録作成、重要資料数点の翻訳・内容解析を、引き続き着実に進め、その成果を論文や学会・研究会などで公表する。 「バヤンのクルアーン」等のイスラーム写本に関する論文集、ムハンマド・サイド・コレクション・カタログ、アフマド・バシール・コレクション・カタログ等の資料集を作成し刊行する。これらの資料を用いて、フィリピンのイスラーム書の特徴を明らかにし、それらを東南アジアのイスラーム書の伝統の中に位置づけ、研究論文を執筆する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
消耗品に45,000円使用する。内訳は、図書資料(フィリピンのイスラーム書) 20,000円、パソコン付属品・事務用品等25,000円とする。 2012年4月と2013年1月にフィリピン現地調査を実施し、合計420,000円使用する。内訳は、(1)4月フィリピン調査(マニラ)(東京発:1名:川島)@10,000X4日 +90,000 = 130,000。(2) 1月(ジャカルタ、ランプン発:2名:Fathurahman, Nurtawab)@10,000X5日 + @3,000X5日+80,000)X2名=290,000円。(1月の川島旅費は別財源を充てる予定)。 謝金に414,000円使用する。内訳は、翻訳,カタログ作成等に120,000円、資料整理に@980円X300時間=294,000円。 その他、資料複写に21,000円使用する。 以上、合計90万円使用する。成果の刊行には、間接経費や他の財源をあてる。
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