2012 Fiscal Year Research-status Report
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23510323
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
川島 緑 上智大学, 外国語学部, 教授 (50264700)
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Keywords | フィリピン / イスラーム / ウラマー / 思想 / ネットワーク / 写本 / 東南アジア / ミンダナオ |
Research Abstract |
4月26-29日、フィリピン、マニラ首都圏にてフィリピン大学イスラーム研究所、国立文化芸術委員会(NCCP)、フィリピナス・ヘリテージ図書館、アヤラ博物館等を訪問し、イスラーム関係資料の調査を行うとともに、フィリピン大学学芸学部教授Abraham Sakili氏、NCCP顧問Jesus Peralta氏、海外研究協力者Usman Imam氏と会い、意見交換と研究打ち合わせを行った。 インドネシアのイスラーム文献学者Oman Fathurahman氏、Ervan Nurtawab氏、フィリピン・ムスリムの人類学者、Labi Riwarung氏、大英図書館のAnnabel Gallop氏の協力を得て、前年度デジタル化したラナオ州マラウィ市のムハンマド・サイド・コレクションのカタログ草稿と、解説論文草稿を執筆した(2013年7月刊行予定)。また、同じく前年度デジタル化したアフマド・バシール・コレクション、「バヤンのクルアーン」を含む、ミンダナオのイスラーム写本に関する解題付カタログThe Qur'an and Islamic Manuscripts of Mindanaoを刊行した。 さらに、3月9-24日、インドネシアからフィリピンにNurtawab氏を招聘し、代表者、および、フィリピン在住研究協力者とともに、北ラナオ州イリガン市、南ラナオ州マラウィ市を拠点として資料調査、聞き取り調査、カタログ草稿執筆を共同で行った。3月16日には、研究成果の現地への還元の一環として、ミンダナオ国立大学イリガン工科大学歴史学部と本プロジェクトの共催により、第4回ミンダナオ写本ワークショップ=セミナーを開催し、本研究の成果の一部を発表した。セミナーには同学部の教員・学生約50名が出席し、写本に対する現地研究者の関心を高めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「バヤンのクルアーン」を含む、ラナオ地方のイスラーム写本の解題付カタログを予定通り刊行することができた。同カタログと関連論文に対して、海外の東南アジア・イスラーム研究者からコメントや問い合わせが多数寄せられ、それをきっかけとして、研究上の国際的ネットワークをさらに拡大することができた。 さらに、ムハンマド・サイド・コレクションの解題付カタログの草稿をほぼ完成し、最終的な編集作業を開始することができた。また、当初の予定通り、インドネシアやフィリピンの専門家と協力して、2回の海外調査を実施した。その際、現地の大学でセミナーを開催し、研究成果を還元するとともに、現地研究者からのフィードバックを得ることができた。 当初、3月に、マレーシア、サバ州タンパソク周辺での調査を予定していたが、2月にフィリピン、スールー州の武装勢力がサバ州に上陸し、マレーシア政府軍との間で武装衝突が起き、治安が悪化したためにやむをえず中止した。サンボアンガ市周辺での調査も、現地の治安に不安があるため、延期した。 以上のように、上記2か所での調査は実施できなかったが、南ラナオ州とマニラでの調査は順調に進展し、カタログ作成や解題執筆も若干の遅れはあるものの、着実に進んでいる。したがって、総合的に判断すると、当初の研究目的をほぼ予定通りに達成することができたと評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに収集したラナオ地方を中心とするフィリピンイスラーム文書の解題・論文付カタログAnnotated Catalogue of Sheik Muhammad Said Collection with Essays、および、イスラーム神秘主義思想の写本Ahl al-Sunna wal-Jamaaの 解題付印影本を本年7月末までに刊行する。それに続いてAhmad Bashir Collectionの解題付カタログ原稿を執筆し、本年度中に刊行する。 9月と3月にフィリピンで、海外研究協力者とともに現地調査を行い、さらに新たな写本のデジタル化、一部資料のマイクロフィルム化を行う。9月には、現地への成果還元と現地研究者との研究連携の強化を目的として、本研究の成果に基づくセミナーを開催する。 これまでに収集した資料に基づき、フィリピンのイスラーム文書を、東南アジア他地域の同分野のイスラーム文書と比較しつつ、その特徴を検討する。 マレーシア、サバ州タンパソク周辺での調査については、現地の治安状況が回復するまで延期する。その代わり、南北ラナオ州、および、コタバト州とその周辺などでの調査をより充実させる。サンボアンガ州での資料収集には、現地在住協力者に依頼するなどの方策を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
消耗品に30,000円使用する。内訳は、図書資料費15,000円、パソコン付属品、事務用品15,000円とする。 2013年9月と2014年3月にフィリピン現地調査を実施し、合計530,000円使用する。内訳は(1)9月:ジャカルタ、ランプン発:2名:Fathurahman, Nurtawab (@10,000x9日+80,000)x2名=340,000円。(川島旅費は別財源を充てる予定)(2)3月:東京発:1名(川島):(@10,000x10日+90,000=190,000円。 謝金に414,000円使用する。内訳は翻訳・カタログ作成等に120,000円、資料整理等に@980x300時間=294,000円。 その他(資料複写、通信・運送費等)に26,000円使用する。 以上、合計100万円使用する。成果の刊行には、間接経費や他の財源を充てる予定である。
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