2011 Fiscal Year Research-status Report
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23510327
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Research Institution | Daito Bunka University |
Principal Investigator |
中野 亜里 大東文化大学, 国際関係学部, 教授 (60188993)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村尾 智 独立行政法人産業技術総合研究所, その他部局等, 研究員 (10358145)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 国際情報交流 / ベトナム |
Research Abstract |
ベトナムのボーキサイト問題に関する情報を収集し、2月に現地調査を実施した。 中野は、ダックノン省とラムドン省のボーキサイト採掘現場を視察し、ガバナンスに関する問題点を明らかにするため、周辺住民への聞き取り調査を行なった。その結果、工場建設と住民の移転計画、労働者の雇用、生産物の運搬などについて、計画の不備、説明責任の不足といった問題が明らかになった。 さらに、首都ハノイでボーキサイト開発に批判的な知識人と面会し、意見を聴取した。中国の企業進出については、中国研究の専門家の意見を聴取した。その結果、当初は中国に対する警戒からボーキサイト開発を批判していた知識人が、環境問題、労働問題、法の遵守など、より普遍的な視点を持つようになった動向が明確になった。 帰国後は、採掘現場では測定した経緯度のデータを基に、衛星画像を入手して、開発の進展度について研究報告用の資料を作成した。また、現地で入手した鉱物資源開発、環境保護に関する法規、労働法、入札法などの文献を基に、ボーキサイト開発問題が顕在化する前と後との変化を分析した。 村尾は、ベトナムで資源・環境省鉱物資源総局、商工省重工業局、教育・訓練省、ベトナム国営石油グループ、鉱山・地質大学の要人と面会し、鉱物資源開発政策の方針、現状、改善策などについて聴取した。その結果、政府機関が掲げている方針と、開発現場の状況にかなりの隔たりがあることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度(平成23年度)に計画していた現地調査が問題なく実現し、資源開発をめぐるガバナンスの問題点が実証された。 ベトナムのボーキサイト開発現場は、国家機密に属するものとして厳重に監視されていると聞いていたが、現地調査を実施するにあたっては何ら困難はなく、住民の率直な意見を聴取することができた。その結果、社会からの異議申し立て、党-国家側の対応については、その概要を知ることができた。 一方、ボーキサイト開発に関する政策決定過程は、透明性を欠いているため、未だに不明確な点がある。中央官庁の要人には、外国の研究者に情報を開示することへの抵抗が一部に見られる。また、公開されているはずの資料の入手が困難な場合がある。
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Strategy for Future Research Activity |
国家計画経済から市場経済に移行したベトナムで、共産党政府、国有企業、知識人、地元住民がそれぞれどのように社会的責任を負い、環境ガバナンスでどのような役割を果たしているのかを検証する。 ボーキサイト開発問題を通じて、環境ガバナンスに関する社会的合意や規範が形成され、共有されるようになっているのか、同問題が政策や立法過程にどのような影響を及ぼしているのかを明らかにする。 環境ガバナンスという理念は、元来は西洋諸国で発達し、西洋的社会がモデルになっている。これに対し、ベトナム独自の環境ガバナンスのモデルが成立し得るのかどうかを考察する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ベトナム国内で、政策決定参画者、関係官庁、企業、専門家を招請し、情報交換のための研究会を実施する。研究費は主に、招請の費用、研究会会場の使用料、通訳料、謝金などに充てる。
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