2012 Fiscal Year Research-status Report
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23510327
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Research Institution | Daito Bunka University |
Principal Investigator |
中野 亜里 大東文化大学, 国際関係学部, 教授 (60188993)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村尾 智 独立行政法人産業技術総合研究所, 地圏資源環境研究部門, 研究員 (10358145)
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Keywords | 国際情報交換 / ベトナム |
Research Abstract |
ひき続きベトナム中部高原におけるボーキサイト開発事業に関する情報を収集、分析した。その成果を、2012年7月の東京大学における日本ベトナム研究者会議、同年12月の産業技術総合研究所における環境地質学シンポジウムで報告した。また、日本国際政治学会編『国際政治 市民社会からみたアジア』上で研究成果の一部を発表した。環境地質学会における研究発表に基づく論考は、The Proceedings of The Twenty-second Symposium on Geo-Environments and Geo-Technics, Japanese Society of Geo-Pollution Science, Medical Geology and Urban geology (PMUG), December 2012, Japanに掲載された。 2013年2月にはハノイで、ベトナム工商省との共催で鉱物資源開発と環境行政に関する研究会を開催し、情報の共有と意見交換を図った。招聘したクイーンズランド大学のスターマン博士と、ウランバートル科学大学のクルドゥルジュ教授が、それぞれ先進工業国と市場経済移行国の経験から資源開発ガバナンスについて講演し、村尾が鉱物資源分野でのグローバル・ガバナンスについて講演した。工商省の他、ハノイ鉱山地質大学、ベトナム社会科学院中国研究所からの参加者もあった。また、駐ベトナム日本大使館から二等書記官と専門調査員がオブザーバー参加し、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)ハノイ駐在事務所、朝日新聞ハノイ支局からの参加もあった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
入手可能な資料の収集と分析は順調に実施している。ただ、ベトナム政府側の対応により、ボーキサイト開発問題についてはベトナム国内での自由な議論が不可能であり、ガバナンスの成立には限界がある。 2013年2月にハノイで開催した研究会の目的は、ベトナム工商省のほか資源・環境省の専門家、ボーキサイト開発に批判的な知識人・市民の代表も出席し、情報の共有と自由な議論を行なうことであった。しかし、工商省の拒否により、資源・環境省や市民代表の参加は不可能となった。 ボーキサイト開発問題は市民による未曾有の反対運動を引き起こした上、計画の不備による様々な障害に直面し、失敗が明白になった。そのような事情から、ベトナム工商省は研究会開催前に、同問題を扱うなら共催を辞退すると伝えてきた。研究会は工商省側が認めた出席者のみで行なわれ、ボーキサイト開発問題は議題からはずされ、開発ガバナンスについての議論も制限される結果となった。 しかし、これによって、鉱物資源開発政策についての責任を問われることを恐れ、問題点を公にしたくないベトナム政府の態度が明確に示された。市場経済に移行したベトナムであるが、大規模資源開発によって発生する問題に多様なステークホルダーが対等に参加するガバナンスが成立しておらず、それに関するオープンな議論さえ不可能であることが明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
ボーキサイト開発政策の失敗が、鉱物資源開発戦略あるいは資源・エネルギー政策全体にどのような影響を与えたかを検討する。同時に、ボーキサイト開発問題を契機に活性化した市民の自律的な言論活動が、国家の立法、行政に及ぼした影響を分析する。 その上で、開発政策に関するオープンな議論が制約されている政治風土の中でガバナンスが成立するために、現段階では何が可能か、何が必要かを追究する。 開発推進側の政府・国有企業からは多くの情報開示を期待できないので、ベトナム国内の知識人、専門技術者、法律家、市民を対象に、上記の目的のための意見聴取、情報交換を行なう。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ベトナムにおける現地調査のため、旅費500,000円(250,000円×2名)、図書購入および研究の成果報告のための消耗品費100,000円(50,000円×2名)を使用する。
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