2012 Fiscal Year Research-status Report
地域社会と民俗服飾-質的分析によるフォークロリズムに関する地域・分野横断的研究
Project/Area Number |
23510329
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Research Institution | Bunka Gakuen University |
Principal Investigator |
糸林 誉史 文化学園大学, 服装学部, 准教授 (60301834)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高田 知和 東京国際大学, 人間社会学部, 准教授 (70236230)
林 在圭 静岡文化芸術大学, 文化政策学部, 教授 (80318815)
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Keywords | 地域社会 / 民俗服飾 / 沖縄 / 韓国 / マレーシア / 文化政策 / 伝統的工芸品 |
Research Abstract |
本研究は、沖縄・韓国・マレーシアの地域社会における、民俗服飾の近代化/復興の過程に纏わる文化の多層性と流用という問題を、1,生活史・地域組織、2,地方史・自治体史誌、3,開発政策・文化政策の3つの局面と、その相関から、質的分析手法を活用して、整理・分析して描出し、民俗服飾研究の新展開を提示することを目的とする。具体的には、3分野の地域研究者が、共同調査を実施して、3つの局面と、その相関を、「フォークロリズム(民俗の二次活用)」とその「歴史的もつれあい」の視角から、「質的分析(QDA)ソフトウエア」を活用しながら記述・分析する。 本研究の意義は、日本の民俗服飾研究に学際的な地域研究アプローチと理論を導入することで活性化すること、高齢化の進む織物従事者の口述データや個人資料、自治体史誌には収録されない民俗服飾関係の団体資料などの質的分析と蓄積、地域研究分野に質的分析(QDA)ソフトウエアを導入するための基礎的条件の提示である。 そのための本調査として、平成24年度は、沖縄県中頭郡読谷村、マレーシアトレンガヌ州およびパハン州において、1,織物従事者の生活史調査、2,事業協同組合、事業団、公社などの生産組織調査、3,地区レベルのコミュニティ調査を実施した。ただ韓国については、研究分担者が多忙のため都合がつかず、平成25年9月に上記の本調査を行うことになった。これまでの調査成果の報告を日本生活文化史学会の論文誌『生活文化史』(第63号)に投稿し、掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究が解明しようとする課題は、民俗服飾の近代化/復興の過程に纏わる「文化の多層性と流用」という問題に対して、〈いま-ここ〉の生活の場のなかで自己をとりまく関係性を肯定しながら、生き抜くための人々の「日常的な実践」を、分析枠組みとしての「歴史的もつれあい」を用いて、人とモノの関係性、思い込みや間違いも含めた「複数のリアリティ」として記述することある。 平成24年度において、本調査の第一局面として、生産者の生活史および生産組織とコミュニティの実相に焦点を当てて調査を実施した。織物業の復興に関わる人々の口述記録および未刊行の一次資料を記録・収集し、質的分析ソフトウエア(ATLAS.ti)を導入して、前年度の調査成果の途中成果を分析し、学会誌に投稿することができた。来年度は、本調査の第二局面として、地方自治体および地方史、自治体史誌に焦点を当てた調査を引き続き実施する。 ただ韓国については、研究分担者が多忙のため調査実施の都合がつかず、大韓民国忠清南道舒川郡の調査を平成25年度に延期せざるを得なかった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、本調査の第二局面として「地方史・自治体史誌」を実施する。 1)地域史誌と編纂: 自治体史・地方史と編纂事業、地域史誌に関する調査…糸林・高田・林(共同)⇒自治体史/「字誌」「面誌」編纂事業、編者と編集方針、字誌の比較、顕彰碑と記憶の再構築 2)地域行政・政策: 地方行政組織と織物に関する行政施策に関する調査…高田(沖縄)、韓国(林)、糸林(マレーシア)⇒工芸産業振興施策、関連統計、議会資料、基盤整備、開発構想 3)地域博物館と民俗誌: 地域博物館・美術館・資料館の展示(所蔵目録)と刊行物…糸林・高田・林(共同)⇒ 指定文化財(優品)/民俗資料の展示、収集/記録事業、自治体史と民俗編の記述 4)《共同研究会(年3回)》:QDAソフトを利用して、各調査結果の質的データについて探索的なデータ検索・分析を行い、その比較分析を通した概念モデルを構築する。概念モデルの総合討論。 5)学会報告:「日本生活学会」、「日本生活文化史学会」など学際的な学会で中間成果を発表。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は本調査の第二局面として「生活史・地域組織」の調査研究を計画している。ただし、韓国の本調査については、研究分担者の調査の都合がつかず、実施時期を平成25年度に延期せざるを得なかった。そのため平成25年9月に韓国の自治体担当者と日程を調整して実施する。 1)地域史誌と編纂: (韓国)自治体史・地方史と編纂事業、地域史誌に関する調査…糸林・高田・林(共同) 2)地域行政・政策: (沖縄)高田および糸林、(韓国)林、(マレーシア)糸林 3)地域博物館と民俗誌: (韓国、沖縄)糸林・高田・林(共同) 4)共同研究会:QDAソフトを利用して、各調査結果の質的データについて探索的なデータ検索・分析を行い、その比較分析を通した概念モデルを構築する。 5)QDAソフトウエアのバージョンアップ。
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