2012 Fiscal Year Research-status Report
現代ミャンマー農村における住民参加型森林資源管理の展開と村落の組織力に関する研究
Project/Area Number |
23510337
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Research Institution | Institute of Developing Economies, Japan External Trade Organization |
Principal Investigator |
岡本 郁子 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, その他部局等, その他 (00450487)
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Keywords | ミャンマー |
Research Abstract |
本研究は、1990年代半ばに導入された住民参加型森林資源管理(コミュニティ・フォレストリー)に対するミャンマー農村社会の受容と対応を、村落の組織力の観点から解明することを目的としている。 二年度目は、初年度に引き続き、村落レベルでのコミュニティ・フォレストリーの実態把握を目的とした調査を実施した。対象は、本課題の調査対象3地域のうちの残りの一つ、デルタ地域である。デルタのコミュニティ・フォレストリーはデルタ最南部のマングローブ林地域を対象として展開してきた。この地域のマングローブ林地は環境保全森林省直轄の指定林地(Reserved Forest) である。しかし1960年代以降、農地や漁場を求めて人々が同林地に流入し定住が始まると同時に、マングローブの伐採が加速化したという背景をもつ。この調査では、コミュニティ・フォレストリーの導入の経緯、組織化過程や維持管理の実態とともに、同地域の既存の組織力をみるために村、ないし村を越えた協同活動の実態の把握も行った。 山間部とドライゾーンのコミュニティ・フォレストリーとデルタのそれを比較するならば、村落が同プログラムの受け入れ単位になっている点は共通するが、村の全世帯が動員、組織化されていない点に差異が認められた。村の社会構造や資源動員形式にはこの3地域の間に大きな相違はないことから、人口流動性の高さや村落の歴史の浅さから、デルタ地域の村の組織化力が相対的に弱いことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度で3つの調査対象地域の村落調査が終了した。ただし、デルタの村落調査は事前情報収集が困難であったことや、非常にアクセスしづらい場所にコミュニティ・フォレストリーが立地しているため、各村落で十分な調査時間を確保できなかった。このため、分析を進めるにあたっての十分な情報が得られたとは言いがたい点が懸念材料である。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画では、本研究のコンポーネントとして、村落調査の後に3地域のいくつかの村において世帯調査を実施する予定であった。この世帯調査はコミュニティ・フォレストリーの世帯生計への経済的寄与度と参加レベルの相関をはかることを主な目的としていた。しかし、初年度、二年度目の調査を通じて、ミャンマーのコミュニティ・フォレストリーが(少なくとも現段階では)個々の世帯に経済的な便益をもたらしているケースは皆無に近く、世帯調査を実施してもそこから得られる有益な情報はほとんどないと判断した。 もう一つのコンポーネントは森林局行政官調査である。これはコミュニティ・フォレストリーに対する政策実施者の認識を把握し、村落の受容、対応過程を考察する際の材料とすることを目的とした調査である。しかしながら、3地域での調査を通じて判明したのは、導入から時間が経過しているコミュニティ・フォレストリープログラムでは担当官がすでに変わり、また引継ぎも十分行われていないケースが多く、このような調査の意義はかなり低いということである。 そこで、今後は村落調査の範囲の拡大と村レベルの事例を掘り下げることを中心に研究を進めていくことが有益と考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費は主に現地調査(村落調査)のために使用する。
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