2014 Fiscal Year Research-status Report
現代ミャンマー農村における住民参加型森林資源管理の展開と村落の組織力に関する研究
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23510337
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
岡本 郁子 東洋大学, 国際地域学部, 教授 (00450487)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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Keywords | ミャンマー / コミュニティフォーレストリー / 協同行動 / 組織化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、1990年代半ばに導入された住民参加型森林資源管理(コミュニティ・フォレストリー)に対するミャンマー農村社会の受容と対応を、村落の組織力の観点から解明することを目的としている。 今年度は、これまで未調査の地域でのCF管理と村を単位とする協同活動の事例を収集するため、東シャン州のチャイントン郡での実態調査を実施した。この地域の特徴は、①村の規模は概して小さく、数多くの少数民族が居住している、②ミャンマーの他の地域に比べて、森林の保全状態は相対的に良好である、③その背景には住民にとって森林が水源、や薪供給源として重要である一方で、④焼畑のみに生計を依存しなくてもよい、すなわち所得源の多様化が進みつつあるということがあげられる。 共有林の権利形態、森の利用に関しては以下のような特徴が見られた。第一に、民族の違いにかかわらず、村有林として長年保護・維持してきた森林をCFとして改めて申請するケースが多かった。その場合、ユーザーグループは、村長やその他村の有力者が長となり、(申請当時の)村の全世帯がメンバーとなる形で形成される。第二に、CF申請の主な動機は、村が慣習的に利用してきた森林への他者の侵入・伐採を防ぐところにあった。CF申請によって、当該村は森林利用を独占的に行う公的な根拠を得たこととなり、それ以前に比べて密伐採等の頻度が減ったケースも見られた。第三に、植林に関しても薪利用に適した木種を必要な箇所に村(ユーザーグループ)が自発的に実施する傾向が見られた。 以上から、同地域ではCFの枠組みが村レベルの森の慣習的利用の権利をフォーマル化し、住民による主体的な管理・利用に一定程度寄与しているといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ミャンマー国内での多様な地域におけるコミュニティフォレストリーの事例収集はおおむね順調に実施することができた。 ただし、H26年度の調査に関しては、ミャンマー政府(ないしは担当省)内で、こうした実態調査の認可にあたって調査実施者の所属機関と担当省と間でMOUが締結が必要との新規則ができたため、調査ロジに多くの調整が必要となった。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、これまで調査未実施の地域での事例収集のための現地調査を実施するとともに、事例の類型化を進め、最終成果をまとめる。
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Causes of Carryover |
初年度(平成23年度)に実施予定だった調査が、協力機関(ミャンマー森林省)の手続き(調査許可等取得)が政治的判断から滞ったため、結果的に未実施に終わった。このために、主に調査旅費に充当する予定であった予算が、未使用のまま繰りこされてきたことが主な理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
調査対象地域を拡大したフィールド調査を実施し、農村レベルの森林管理のための住民組織化の事例をさらに収集するとともに、報告書を作成する。
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Research Products
(1 results)