2013 Fiscal Year Research-status Report
内戦復興社会におけるクォータ制の役割と受容の過程:ネパールを事例として
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23510340
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
幅崎 麻紀子 筑波大学, ダイバーシティ推進室, 准教授 (00401430)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 斉華 帝京大学, 文学部, 准教授 (10349300)
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Keywords | ネパール / クォータ制 / ポジティブアクション / 女性の政治参加 / ジェンダー / 文化人類学 |
Research Abstract |
平成25年度は、本研究の調査対象として大きな位置を占める制憲議会が解散中であり、調査対象者が2013年11月の制憲議会選挙のために準備中であるため、カトマンズに在住している元議員へ、選挙活動についての参与観察と聞き取り調査を行うと共に、地方部における女性たちの政治活動について、少数民族の女性の政治参加を視野に含めながら聞き取り調査・文献調査を実施した。 その結果、クォータ制は国会のみならず1996年地方議会選挙法によって地方議会にも導入されているが、地方におけるインパクトは都市部とはかなり異なっていることが明らかとなった。1999年に地方議会選挙において議員となった女性たちは、2002年以降地方選挙は実施されていないため、その後政治活動を続けていない者も少なくないものの、クォータ制によってリクルートされた、当時全く政治活動経験を持たない者たちであった。村議会の議員候補にノミネートされる人材が不足していたため、女性コミュニティ保健ボランティアやマイクロクレジットグループで活動する女性、そして男性の政治家の親族関係にある女性がリクルートされていたこと、人によっては複数の政党からの依頼があったことなどが明らかになった。地方においては、議員となることが、受動的に進んでいたことがわかった。更に、当選した後も議会に参加することの金銭的保証がなく、政治活動は家業(農業)との両立において負担となっていた。一方、国政選挙で議員となった女性たちの金銭的補償は恵まれており、政治活動をすることで生活を維持することができること、そして、出身地域において既に政治社会活動経験を持ち、少なくとも、政治活動を将来に渡って継続していくことを希望していた。 平成26年度は、中央と地方の女性の差異を中心に、クォータ制のインパクトについて引き続き聞き取り調査を実施し、そのデータを分析し研究成果として発表予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
制憲議会解散後、元議員の多くは郷里に戻っているため、追跡インタビューを試みるも、農村部滞在中のため連絡がつかなくなってしまった。また、再選挙前後は政治的に不安定な状態となり治安の悪化により、聞き取り調査に遅れが生じてしまった。しかし、本期間において、新たに文献資料を入手し、地方議会議員の元女性議員を視野に入れるなど、研究の視点として地方の状況を視野に入れ、クォータ制のインパクトについて、複層的な視点からの分析へと幅を広げることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに収集した資料を整理・分析し、引き続き調査活動を行うと共に、地方へのインパクトと中央でのインパクトの相違性に目配りしながら、聞き取り調査を行う予定である。特に、政治参画への経緯と地域社会や家族関係との関係について補足データを収集する。そして、2013年11月の制憲議会選挙のインパクトについても、クォータ制を主張する集団の動きと比較しながら分析する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2012年5月に解散したため、地元出身の元議員は郷里に戻っている者も多く、追跡インタビューを試みるも、農村部滞在中のため連絡がつかなくなってしまった。また、2013年11月の再選挙前後は政治的に不安定な状態となり、治安が悪化してしまったため、インタビューが困難となった。そのため、聞き取り調査に遅れが生じ、未使用額が発生した。 第2次制憲議会が開会され政治的不安定も改善されつつあるため、平成26年度は前年度に滞ってしまった地方部での聞き取り調査を行う。と共に、今回の選挙活動経験をも踏まえながら、女性の政治参画について当事者のみならず、家族へのインタビューも含めて実施する。その上で、収集したデータを解析し、学会発表及び論文としてまとめた上で学会誌へ投稿する予定である。未使用の研究費はこれらに充当する。
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