2013 Fiscal Year Research-status Report
経済インフラの社会ジェンダー分析 貧困削減と食糧の安全保障へ向けて
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23510341
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Research Institution | National Women's Education Center |
Principal Investigator |
田中 由美子 独立行政法人国立女性教育会館, その他部局等, 研究員 (60571221)
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Keywords | ジェンダー / 土地権 / 灌漑稲作 / 政府開発援助 / タンザニア / キリマンジャロ州 / 遺言書 / 土地所有制度 |
Research Abstract |
タンザニア国キリマンジャロ州ローアモシ灌漑地区において、農村女性の土地(灌漑稲作圃場)に関わる諸権利が、どのように形成され変容してきたのかについて検証するために第3次現地調査を行った。これまでに、上流、中流、下流地域の3ブロックを選定し、半構造的面談調査及び質問票による全数調査を実施した。面談者は、灌漑地区内の土地所有者および非土地所有者であるが、全数調査では3ブロックの土地所有者男女を対象とした。質的および量的データを分析した結果、女性の土地所有者数および面積の割合が、全3ブロックにおいて1987~2013年間に増加したことが判明した。ただし、土地は男性から女性に移譲されただけではなく、女性が所有者となって次の世代で男性に再移譲されるケースもあることがわかった。また女性の土地所有者で自己名義登録をしている場合と、社会的には土地所有者であると認知されていても自己名義登録をしていない場合があり、農村女性は固有の家族関係や婚姻関係において土地の所有、管理、相続に関して「価値があると思う」選択をおこなっている。土地所有の意味については、男女ともに収入や安定した生活のために土地所有を「価値あると思う」こととして捉えているが、女性にとっての土地所有は婚姻制度に内在するリスク軽減という側面がある。さらに女性の土地所有は必ずしも土地の管理権(処分権、収益権、営農権)を伴っているわけではない。土地所有に関わるリスクを軽減する装置として、拡大家族から核家族への社会変容に伴い、男性は直系の家族に土地を譲渡したい(息子のみならず妻や娘も含む)、女性は離婚や別居して困窮している娘に譲渡したいという選択が、遺言書の作成と言う行為として出現している。さらに地域コミュニティと農村女性の間の相互作用・協同の契機を増幅していくことが農村女性の土地に関わる諸権利の実現可能性に繋がることも検証された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
タンザニアにおける第1~3次現地調査が順調に終了した。途上国ではほとんど存在しない非常に希少な1980年代の統計データや土地台帳、圃場のプロット図、過去10年間の気象データなども入手し、1987年から2013年までの土地権の経時的変化を性別に分析することができた。本年度の調査結果については、タンザニア農業省、ダルエスサラーム大学ジェンダーセンター、タンザニアJICA事務所などにフィードバックすると同時に、これまでの成果については、東京大学、国内外の学会、および欧州連合(EU)、アジア開発銀行(ADB)、国際協力機構(JICA)などのセミナー等で発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに、ローアモシ灌漑地区全体の家計状況に関するサンプル調査および土地とジェンダーに関する全数調査を実施し、さらに質的な面談調査も実施した。論文に使用した以外にも、豊富なデータが残っている。今後は、計量テキスト分析(quantitative context analysi1s, KH Coder)などの手法を採用し、データ分析を実施する予定である。さらに、英文の論文を取り纏め、世界銀行などの国際援助機関が主催する国際セミナー、および国際的な学会において成果を発表していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
予定していた国内外の学会への参加が、業務上の都合により延期されたことなどの理由による。 関連する書籍類・備品の購入、日本国内における学会投稿・発表など
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Research Products
(1 results)