2011 Fiscal Year Research-status Report
韓国のジェンダー主流化の取り組みにおけるナショナル・マシナリーの分析
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23510344
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
申 キヨン お茶の水女子大学, 大学院人間文化創成科学研究科, 准教授 (00514291)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ジェンダー主流化 / ナショナル・マシナリー / 韓国女性家族省 / ジェンダー平等政策 |
Research Abstract |
初年度である23年度は、ジェンダー主流化に関する文献収集を通じて理論研究、さらに夏にソウルへのフィールドワークを実施した。ソウルでは梨花女子大学の「アジア女性学センター」のビジティングスカラーとして3週間研究を行い、韓国の専門家や研究者らと交流、意見交換を行った。また、韓国語の1次資料も収集できた。つぎに、申請時の計画に沿ってアメリカのシアトルのワシントン大学、政治学科の研究者らと交流し、研究計画について意見交換を行った。ワシントン大学訪問期間中に開催された当年のアメリカ政治学会にも参加することができた。 韓国のジェンダー主流化を進めるべき女性家族部は、保守的な性格の強い政権に交代された以降、直ちに組織改革の対象になり、「女性部」に縮小された。政権の半ばには「女性家族部」に取り戻されたが、政権初期には廃止の危機に追い込まれるほどの組織的な不安定さを経験した。そのような変遷の中で、従来より権限が縮小され、女性の権益に関する事業は萎縮されたように思われる。先行研究でも指摘されるように、ナショナル・マシナリーは、権限の小さい政府機関となりがちであり、他省庁と比較して政権の性格に影響されやすいことを証明することであるだろう。 しかしながら、単独省の形を採用していることで国会には常任委員会が設置されており、とりわけ、韓国国会法案データを分析してみると、少なからず独立した予算と権限を持つことにより、ナショナル・マシナリーの政策的な可能性は決して無視するほどではないように思われた。今後国会の常任委員会との関係も視野にいれた分析が課題として浮き彫りになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
夏のフィールドワーク実施で関連資料や韓国語文献を包括的に収集し、基本的な理論研究や事実関係を把握できたのでおおむね研究計画とおり進展していると思われる。ただし、フィールドワークが夏に限っており、関係者に対するインタビューはまだ実現できなかった。そのため、初年度の研究業績は具体的な形にすることができなかったが、次年度以降の研究報告のための理論枠組みはおおむね完成されたと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度も引き続き夏にソウルで第1回目のフィールドワークを実施する予定であり、去年と同様に韓国の梨花女子大学の「アジア女性学センター」の協力を得る予定である。今年は、韓国の次期大統領を選出する大統領選挙が予定されており、現政権末期におけるジェンダー政策の変化、および、12月の大統領選挙によるジェンダー主流化政策が大きく変動する時期である。 このような政治変動期は、ジェンダー主流化を担当するナショナル・マシナリの役割が大きく試される時期でもある。そのような変化のダイナミックスをつかむために、12月に第2回目のフィールドワークを実施する予定である。同時に、大統領選にむけた各政党のジェンダー平等公約などの資料も収集する計画である。 また、関連研究成果の報告のために、本年度開催の世界政治学会(スペイン、マドリード)で報告を予定している。ジェンダー主流化の研究が盛んなヨローッパの研究者らとの交流を通じてさらに研究深化を望んでいる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1.ソウルへの2回フィールドワーク実施のための旅費2.海外学会、国際会議への参加、研究報告のための旅費3.洋書、和書、および韓国語文献購入4.ノートパソコン購入のための物品費
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