性差に基づいた胃発癌抑制の試み

2012 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 23510346
• Research Institution: University of Fukui
• Principal Investigator: 大谷 昌弘 福井大学, 医学部, 助教 (20372500)
• Keywords: SERM

Research Abstract

胃癌罹患率には性差が認められ、男性の方が有意に高い。疫学的研究においても女性ホルモンが胃癌発症に対し予防的に作用する可能性が示唆されている。申請者はこれまでに胃発癌動物実験モデルを用いて女性ホルモンのエストロゲンが胃炎と発癌に対して抑制的に作用していることを報告した。本研究では、①動物実験モデルで確認されたエストロゲンによる胃発癌抑制作用メカニズムの解析を継続し、②選択的エストロゲン受容体モジュレーターを用いた胃癌の予防、及び治療への新しいアプローチを検討する。
選択的エストロゲン受容体モジュレーター（SERM)として本研究では骨粗しょう症薬として使用されている塩酸ラロキシフェンを選択した。塩酸ラロキシフェンのH,pylori感染による胃発癌への予防効果を検討する。塩酸ラロキシフェンの1日投与量を100μg/bodyとへの設定し、90日間のslow releasing pelletを作成した。マウス100μg/bodyの投与はヒト投与量の約2-3倍と換算される。マウスはH,pylori感染により胃発癌を来す、ガストリントランスジェニックマウス（INS-GASマウス）を用い、①塩酸ラロキシフェン投与群②塩酸ラロキシフェン2倍量投与群③非投与群を作成し、それぞれH.pylori感染・非感染に分けて、実験計画を作成した。各群は6-10匹構成し、現在感染実験を遂行中である。次年度に解剖と解析を行う予定である。

Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

塩酸ラロキシフェンを投与しても、現在の時点でマウスに副作用は認めらておらず、感染実験は順調に遂行されている。

Strategy for Future Research Activity

長期の感染実験を終了し、解剖後解析を行い、塩酸ラロキシフェンによる胃発癌予防効果を分子生物学的、病理組織学的、免疫組織学的に評価・検討する。　引き続き、塩酸ラロキシフェンのkey receptorと考える、ERβに対して注目し、ERβがどの様に発癌予防に影響しているのかを検討する。

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

感染実験を終了後解析を行い、分子生物学的（RT-PCRによる炎症性サイトカインの発現）、病理組織学的、免疫組織学的（Ki-67などの細胞増殖マーカー）に評価・検討する。引き続き、短期の動物実験にて、ERβのagonistであるDPNの胃発癌予防効果を評価したい。