2013 Fiscal Year Research-status Report
女性に特有な微小血管性狭心症および冷え症の病態解明と漢方的アプローチ
Project/Area Number |
23510349
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
中川 幹子 大分大学, 医学部, 助教 (50244182)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮崎 寛子 大分大学, 医学部, 医員 (20555205)
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Keywords | 冷え症 / 血管内皮機能 / 心拍変動 / 自律神経機能 / 漢方薬 |
Research Abstract |
【目的】若年健常女性を対象に、血管生理機能検査および自律神経機能検査を行い、冷え症の有無により比較した。また冷え症女性における漢方薬の効果を検討した。 【方法】対象は冷えの自覚のある女性11名(冷え症群、平均年齢:23.4±4.2歳)および冷えの自覚のない女性10名(コントロール群、平均年齢:20.9±1.2歳)である。10分間の安静臥床後、赤外線体温計で皮膚温測定および血圧測定を行った。その後、Endo-PAT2000を用いて血管内皮機能検査を行い、Reactive Hyperemia Index (RHI)(反応性充血指数)およびAugmentation Index (AI)を計測した。またホルター心電図を装着し、24時間記録より心拍変動を解析した。冷え症群は1回目の検査日の2週間後から漢方薬(桂枝茯苓丸あるいは当帰芍薬散 7.5g/日)の内服を開始し、2週間後に同様のプロトコールで2回目の検査を行った。コントール群も約1ヵ月後に2回目の検査を無投薬下で行った。両群とも1回目と2回目の検査日の性周期を一致させた。 【結果】 (1)冷え症群は皮膚温(足背と足指)はコントロール群に比し有意に低値であった。(2)冷え症群では血管内皮機能の指標であるRHIはコントロール群と有意な差を認めなかったが、血管弾性の指標であるAIは低下傾向にあった。(3)心拍変動解析において、冷え症群では副交感神経活動の指標がコントロール群に比し低下傾向にあった。(4)冷え症群は漢方薬投与後、有意な皮膚温の上昇を認めたが、RHI、AIおよび心拍変動指数は投与前後で有意な変化を認めなかった。 【考察】健康若年女性の冷え症に、血管機能(特に弾性)の低下と自律神経機能異常が関与している可能性が示唆された。また、漢方薬は冷えを改善する効果があるが、血管内皮機能や自律神経機能に対する影響は認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
冷え症は更年期女性に多くみられるが、冷え症で悩んでいる若年女性も多い。冷え症は西洋医学的には自律神経機能失調による血管運動機能障害から生じる末梢循環不全が原因と考えられているが、血管内皮機能や自律神経機能との関係を臨床生理検査で客観的に評価している研究はほとんどなく、西洋医学的に有効な治療法はほとんどない。 我々は健常若年女性を対象とし、冷え症における血管内皮機能および自律神経機能の評価を行った。さらに漢方薬の冷えに対する効果と血管内皮機能および自律神経機能に及ぼす影響の検討を行い、血管機能(特に弾性)の低下と自律神経機能異常が冷え症の発症に関与している可能性があるという興味深い結果を得た。しかし、漢方薬は皮膚温を上昇させたが、血管内皮機能および自律神経機能には影響を与えておらず、他の機序により冷え症を改善させたと考えられた。 若年女性の冷え症についての研究は予定通り終了したが、更年期女性の冷え症患者および微小血管性狭心症患者を対象とした研究は遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後行う予定の研究は以下の2つである。 (1)更年期女性を対象に、血管内皮機能測定、ホルター心電図を用いた心拍変動を用いた自律神経機能の評価を行い、冷え症との関連を検討する。 (2)末梢性冷え症状を有する患者を対象に、漢方治療を12週間行った後に基本プロトコールを用いた同様の評価を行う。 微小血管性狭心症と確定診断をつけることは容易ではなく、今年度の実施状況からも、予定通りの患者数が集まらない可能性がある。 従って、健常更年期女性を対象にした研究を優先して進める予定である。 また、既に終了した若年健常女性の研究の保存凍結血漿を用いて、血管内皮機能に関する新しい血清学的指標を測定する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H23-25年に行った研究の方法ではデータにばらつきがあり、正確な解析ができない可能性があるため、計画を一部変更し、最近測定可能となった新しい方法(TPX3等の血清学的指標等)を追加して血管内皮機能の解析を行うこととしたため、未使用額が生じた。 新しい方法を用いた血管内皮機能の解析と学会および論文発表を次年度に行うこととし、未使用額はその経費に充てる。
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