2013 Fiscal Year Annual Research Report
知覚行為論の構築─生態心理学・現象学・認知哲学の観点から─
Project/Area Number |
23520005
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Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
小林 睦 東北学院大学, 教養学部, 教授 (20292170)
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Keywords | 現象学 / 生態心理学 / メルロ=ポンティ / ギブソン / 可逆性 / 知覚システム / 内部存在論 / 直接実在論 |
Research Abstract |
平成25年度の研究実績の概要は、以下の通りである。 ① まず、ギブソンの知覚論における中心概念である「知覚システム」と「アフォーダンス」を取り上げ、それがどのような意味をもつのか、また、ギブソンの「直接実在論」がどのようなものなのか、を分析した。こうした作業のために依拠したのは、主著『知覚システムとしての諸感覚』と遺稿集『実在論の理由』に収められた諸論文である。② 次に、これら「知覚システム」や「アフォーダンス」に対応する類比概念として、メルロ=ポンティの知覚論を特徴づける「可逆性」および「世界の輻〔や〕(rayons de monde)」といった概念が、どのような含意をもつのか、そして、メルロ=ポンティが主張する「内部存在論」がどのようなものなのか、を確認した。そのために、特に重要な意味をもつのは、『眼と精神』『見えるものと見えないもの』などの著作や、『受動性』や『自然』などにかんする講義録であった。③ 最後に、ギブソンとメルロ=ポンティに影響を与えたゲシュタルト心理学、とりわけ、ケーラーによってなされた「恒常仮説」批判、さらにゲシュタルト心理学の鍵概念である「不変項」、「体制化」などについて、ギブソンとメルロ=ポンティがそれをどのように自らの議論に取り込んだのかを比較検討した。 こうした研究から明らかになったのは、ギブソンとメルロ=ポンティの知覚論には多くの類似性が見られるものの、ギブソンは情報ピックアップ説にもとづく「直接実在論」を堅持しているのに対し、メルロ=ポンティの知覚論は超越論的な水準での「内部存在論(Endo-ontologie)」であり、知覚者と世界との関係についての捉え方には、両者のあいだに大きな違いがあるということであった。以上の研究成果は26年度に論文として発表される予定である。
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Research Products
(1 results)