2012 Fiscal Year Research-status Report
定言命法の体系とその実現のための技術的仮言命法の創出に関する研究
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23520010
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
小野原 雅夫 福島大学, 人間発達文化学類, 教授 (70261716)
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Keywords | カント / 実践哲学体系 / 定言命法 / 法・政治哲学 / 実質的倫理学 / 仮言命法 / 市民参加 / 哲学カフェ |
Research Abstract |
研究目的のうちの『道徳形而上学』を「定言命法の体系」として読み解いていくという部分に関しては、「徳の定言命法の体系」ならびに「全体の結論」にあたる部分を執筆し、博士論文指導教員に当たる法政大学の牧野英二教授のもとで指導を受けた。この部分は当初の予定より若干進行が遅れているので、まとめ終えるにはいたらなかったが、次年度においてまとめきるためにはどのような手立てが必要かということも含めて、内容ならびに研究の進め方に関してきめ細かい指導を受けることができた。その指導にもとづき、すでに執筆を終えていた「90年代におけるカントの自律概念」の部分について手直しをした上で、学内の紀要論文として発表した。 また、カントの法・政治哲学に関する研究書としてひじょうに高い評価を受けているケアスティングの『自由の秩序』の翻訳(共訳)を終え、ミネルヴァ書房から刊行することができた。 研究目的の後半部分、定言命法を実現するための技術的仮言命法を現実の社会の中で開発していくという部分に関しては、当初の計画では次年度から「てつがくカフェ」を福島で開催する予定であったが、こちらは前倒しですでに前年度からプロジェクトを開始することができており、今年度も引き続き月に1回のペースで「てつがくカフェ@ふくしま」を開催し続けることができた。本年度は「本deてつがくカフェ」に加えて「シネマdeてつがくカフェ」という新しい形態も始めることができた。また3月10日には「てつがくカフェ@ふくしま特別編3」として、原発問題を扱って多くの一般市民と対話の場を設定することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的の前半部分と後半部分に分け、当初の計画では最初の2年間で前半部分を終了し、後半部分に関しては最初の2年間は準備期間と位置づけ、後半の2年でそちらを本格的に始動させる予定であった。ところが、思いの外に、後半部分が研究期間の最初期からフル稼働し始めてしまい、それは予想外の成果であったが、その分前半部分の研究の進行が遅れてしまうことになった。研究目的の達成度として考えるならば、前半部分は50%、後半部分は80%ということになるだろうか。全体を平均してみるならば65%くらいの達成度であり、4年間という研究期間のうちの半分を終えたところとしては、当初の計画よりも順調に進んでいると言えよう。
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Strategy for Future Research Activity |
後半部分に関しては、これまで通り「てつがくカフェ@ふくしま」を月に1回のペースで開催していく。哲学カフェの運動は東北全体に広がりつつあるので、各地の哲学カフェとも連携しながら、この試みの有効性を検証する段階に入っていく。「てつがくカフェ@ふくしま」は日本全国で行われている他の哲学カフェと比べて、やりっぱなしではなく、毎回の話し合いの内容をまとめ、ブログを通じて発信している。その蓄積はすでに丸2年分、24回分にも上っており、この財産の活用方法も探っていきたい。それらを手がかりに、定言命法を実現するための技術的仮言命法に関する理論的研究にも着手したい。 前半部分に関しては進行が遅れ気味で達成度50%と書いたが、研究の全体構想の全12章分のもととなる原稿はすべて揃ったので、あとは以前に書いた論文に手直しをして、ひとつの研究として整合するように文言を整えていくというのが、残り50%の課題であり、この作業を粛々と進めていきたい。引き続き牧野教授に指導を受けるとともに、日本カント協会や日本倫理学会、カント研究会等々の場で議論に付し完成度を高めていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
てつがくカフェに関しては引き続き会場費が必要となるが、公共の施設が利用できたり、市内のカフェが協力してくれるので微々たる額ですむ。東北各地や東北に限らず日本全国の哲学カフェと連携するために旅費が必要となる。 定言命法の体系に関する研究をまとめていくためには図書の購入が必要であるが、今後はそれほど多くを必要とはしないだろう。中間の成果を発表し研究の完成度を高めるために学会や研究会への参加が不可欠であり、そのための旅費が大部分を占めることになる。
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Research Products
(5 results)