2012 Fiscal Year Research-status Report
ヴォルフ主義哲学との関係から見たカントのヴィルキューアの自由をめぐる総括的研究
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23520013
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
檜垣 良成 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (10289283)
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Keywords | カント / ヴォルフ主義哲学 / バウムガルテン / ヴィルキューア / 自由 |
Research Abstract |
前年度に再検討したアレクサンダー・ゴットリープ・バウムガルテンの『形而上学』第3部「心理学」の「経験的心理学」の中の「上級欲求能力」=「意志」論のテクストを、重要概念についてはカントの用法を踏まえながら整理して、カント理解にとって不可欠な資料として活字化した。 その際、ドイツでの資料調査検討の成果もあって、前批判期のカントの「根拠」論との関連や、ライプニッツの「自由」論とのコンテクストなど、ヴィルキューアの自由の意味を読み解くための新たな課題も判明した。ライプニッツは、いわゆる「均衡無差別の自由」(libertas indifferentiae aequilibrii)を一貫して批判しているが、最初期のカントも同様であり、また、批判期カントの自由論においても、このコンテクストが看過されるべきでないという見通しが得られた。 また、「自由なヴィルキューア」の概念に関して、バウムガルテンの規定が、1781年に第一版が公刊されたカントの『純粋理性の批判』(Kritik der reinen Vernunft)の「超越論的弁証論」(Transzendentale Dialektik)および「超越論的方法論」(Transzendentale Methodenlehre)において、いかに引き継がれているかを確認した。 そして、そこで確認された「自由」の思想が、1785年の『道徳形而上学の基礎づけ』(Grundlegung zur Metaphysik der Sitten)においていかに転換し、1788年の『実践理性の批判』(Kritik der praktischen Vernunft)においてどのように完成されたかも、バウムガルテンの思想との対比において、明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度に積み残した、バウムガルテン『形而上学』の関連個所(上級欲求能力=意志についての教説)の整理活字化を実現させ、ライプニッツや最初期カントとの関連などの新たな課題を発掘しながらも、当初の計画にあった『純粋理性の批判』、『道徳形而上学の基礎づけ』および『実践理性の批判』におけるバウムガルテンの「ヴィルキューア」概念の継承と変化を明らかにできたので、当初の研究目的はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定どおり、従来の研究において「選択の自由」理解のかなめであった1783年の『単なる理性の限界内の宗教』におけるヴィルキューアの自由の思想を精査して、この著作でカントは『基礎づけ』や『実践理性の批判』の「自律」としての「自由」とは異なる「選択の自由」を主題化したとする従来の解釈が誤解であることを明らかにする。また、晩年の1797年の『道徳形而上学』における「意志」と「ヴィルキューア」との区別の思想も、『基礎づけ』や『実践理性の批判』の思想を変更するものではなく、単に既に明らかにされていた「意志」の純粋性の思想を改めて表現し直したものにすぎないということを、やはりバウムガルテンの思想との対比において、検証する。 また、本年度の研究で明らかになったライプニッツの自由論とのコンテクストは、研究を深める上で極めて重要なので、彼の『形而上学叙説』、『弁神論』等のテクストの検討も並行して進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(2 results)