2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23520014
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
渋谷 治美 埼玉大学, 教育学部, 教授 (50126083)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | カント / 自己実現 / 人間思想 / 最高善 / 価値ニヒリズム / 演繹論 / 観念論論駁 / 四極構造 |
Research Abstract |
○ これまで未読であったカント『天界の一般自然史と理論』を読み、改めてカントの天文学的知見の深さと発想の現代性を認識した。『純粋理性批判』を「原則論」まで読み直した。ハイデッガーのカント書を再読し、彼のカント解釈の斬新さと問題点を確認した。○ カントの人間思想を総合的に把握するために、自分独自の「カント仮説」を10立て、それぞれに下位仮説を3~11設けた。これをこのあとの著作執筆の基盤とする。これが今期の一番の成果である(現在、ヴァージョン13まで改訂)。○ ある有名大学から非常勤講師を依頼された機会を活かし、前・後期を通して上記の「カント仮説」のうち4つを選んで学生に講義を施した。これを通して仮説の説得性を確かめ、弱点を見出した。○ H.24年1月にウィーン大学のペルトナー教授を訪ね、上記の仮説の説得性について率直な批判を仰いだ。教授は長年の研究連携の実績からくる信頼のうえに立って、親身に批評を下さった。○ H.23年8月末から9月にかけてカント研究の友人の主催するカント研究合宿に参加し、本研究について中途報告する機会を得た。私以外の参加者14人から率直な批評を受け、たいへんに刺激になった。また10月に慶應義塾三田哲学会、11月に日本カント協会のそれぞれの学会の機会に、本研究について口頭発表する機会を得た。H.24年3月末に京都で開催されたカント研究会京都例会における著名なカント研究者の書評会に出席し、発言する機会を得た。これらの機会を通して本研究の説得性を高めることができた。▼ これまでの自分のカント関係の論文(約20本強)を読破する作業は進まなかった。H.24年度の最重点課題とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記「研究実績の概要」にあるように、過去の自分のカント関係論文を読破する作業を除いて、他の研究計画をほぼ達成したうえに、当初念頭になかった自分独自の「カント仮説」を立てることの意義が大きいので、(2)と判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
○ 「カント仮説」をさらにブラッシュ・アップする。これを基にして、カント研究のモノグラフィを出版するべく、章建てをする。これとは別に、過去の自分のカント関係論文(20本以上)を読破し総点検して、上記の章建てに基づいて活かせる箇所を確定する。○ 内外の永年の研究協力者に引き続き批判を仰ぎつつ構想を練り上げる。○ 『判断力批判』等、これまで研究が薄かった領域について重点的に研究を補足する。また、カント思想の体系的な把握を試みた内外の先行研究書を集中的に読破し、自分の研究視角の特徴と独自性をさらに明確にする。○ 紀要論文の執筆、内外の関連学会、研究会での口頭発表等の方途を活かす。○ 最後に、本研究を一冊の本としてまとめるべく、執筆する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
○ カント思想の体系的な把握を試みた内外の先行研究書、新刊を購入する。[図書購入費]○ ウィーン大学のカント哲学の共同研究者G.ペルトナー教授を再度訪問するか、招聘して、じかにカント哲学を総合的に把握するさいの留意点などの教示を受ける。[外国出張旅費]○ 永年交流の深い国内のカント研究者に会って、彼らの独自なカント解釈の真意をじかに聴きながら、自分のカント把握の構想について批評を仰ぐ。[国内出張旅費]○ 耐用年数が過ぎた研究用のノート型パソコンを買い替える。[設備備品費]
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