2011 Fiscal Year Research-status Report
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23520018
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中畑 正志 京都大学, 文学研究科, 教授 (60192671)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 意識 / conscientia / conscience / デカルト / カドワース |
Research Abstract |
本研究の目的は、意識概念の歴史的性格の解明を通じて、意識をめぐる哲学的諸問題に新たな示唆をおこなうことである。本年度は、主としてデカルトおよび R.カドワースにおける意識の概念形成にかかわるプロセスを具体的に解明することを計画し、その計画を実施した。成果の概要は以下の通りである。 まず、デカルトの著作内におけるラテン語 conscientia およびフランス語 conscience の用法を当時の言語状況との関連で分析した。ラテン語 conscientia については、古典期およびスコラ哲学などにおける conscientia の用法、および聖書などの非哲学的文献でのこの言葉の用法から、デカルトがこのラテン語の意味を「良心」から「意識」へと転換したという通説は誤りであることが論証された。しかし同時に、懐疑論に対する独自の応答を通じて、デカルトがこの語およびそれによって規定されるcogitatioの概念を支える心の理論にきわめて大きな変革をもたらしたことも同時に確認された。なお、フランス語のconscienceの意味の変遷については、Rodis-Lewisの研究が示すように、デカルトが意味の変換に重要な貢献をおこなっていると考えられる。 他方、カドワースについては、その主著True Intellectual System of the Universeを中心に、そのconsciousness の概念を分析した。カドワースのconsciousnessの概念は、デカルトからよりもプロティノスをはじめとした新プラトン主義の影響が大きいことを具体的に証拠づけ、またそのことがカドワースのこの概念理解に含まれる自己認知的、自己参照的性格の大きな源泉であることを示した。 さらにいわば意識概念の確立の前史に当たるデカルト以前の関連諸概念についても、自己知の概念を手がかりに考察を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書の「実施計画」をすべて実行し、具体的な成果を挙げた。その一部は、すでに論文にまとめて2012年度中に西日本哲学会の編集の下で刊行される予定の書物に掲載が決定している。
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Strategy for Future Research Activity |
交付申請書の「研究実施計画」では、24年度にデカルト以前の、近代的な意識概念のいわば不在状況についての分析を進める上で、デカルトが批判対象としたアリストテレスを中心にとりあげる予定とした。これを実施するとともに、さらにそのアリストテレスの前史となる古代ギリシアにおける自己知あるいは自己知覚の理解についても、24年度に分析を進める予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記のように、西洋古代思想に関連する研究は、交付申請書の「研究実施計画」よりもさらに研究対象を広げたので、それにしたがって次年度に資料の購入する予定である。それ以外は「研究実施計画」どおり研究費を使用する予定である。
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