2013 Fiscal Year Research-status Report
形而上学史再構築のための基礎的研究――カント《Opus postumum》への道
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23520019
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
福谷 茂 京都大学, 文学研究科, 教授 (30144306)
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Keywords | ヘノロジー / ハイデガー / ライプニッツ / カント |
Research Abstract |
今年度は、昨年度の研究成果に基づき、カント哲学の最終形態を示す『オプス・ポストゥムム』の読解を通して、カント以前及び以後の諸哲学者がこの観点からどのような新しい姿を見せるかということの解明に力を注いだ。具体的には、まず、その哲学的形成において、カントが決定的な役割を果たしたとみられるハイデガー哲学の解釈において、カント哲学の最終形態に関するわれわれの見解が生み出すものを「ハイデガー・フォーラム」での講演を通じてハイデガー研究者に提示して、批評を仰いだ。この際、ヘノロジーの観点を投入することで、ハイデガー哲学もまたヘノロジーの一つのバリエーションないし二十世紀的な一形態として考えられる点を強調した。ヘノロジーの概念は、わが国ではまだ公共のものとはなっていないので、その点に関する質問と批評が多く寄せられた。さらに、カント以前の哲学者として、ライプニッツとの関係づけに関しても、〈ヘノロジカル・カント〉というわれわれの見地は、両者の相互関係の解明を、従来より深めた。すなわち、ライプニッツの『モナドロジー』は、その最終部分で神の「帰結的意志」という概念を提出しているが、この概念をヘノロジカルな性格のものとみることによって、ライプニッツにおける自由と決定というトピックに新しい照明を当てることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初ヘノロジーという概念は、「存在」の問題に代えて「一と多」の問題を形而上学の中心課題とするという立場だという理解に基づいて研究に取り組んだが、一昨年および昨年の成果に基づく今年度の研究において、ヘノロジーそのものにおいて特に近世的な形態を抽出して考えることの必要性が明らかになった。すなわち、近世におけるヘノロジーのもっとも重要なテーマはたんに「一と多」ということだけではなく、いかにして「一」を語ることができるか、また「一」を語ることがどのような次の段階へと導くことになるのかということである。この視界において、カント『オプス・ポストゥムム』におけるスピノザの登場の真意が初めて明らかになり、近世哲学史におけるスピノザの位置の決定的な重要性がおのずから現われることになった。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のような研究の進捗により、いよいよカント『オプス・ポストゥムム』を解読するためのわれわれの視点が定まった。本年度は、研究協力者を引き続き雇用して、『オプス・ポストゥムム』の翻訳を遂行する。傍ら、近世哲学史全般にわたってヘノロジーの観点を及ぼす作業を続行する。とりわけ、現代ヘノロジーという概念を定立し、現代の哲学的シーンにおいて、新プラトン派、スピノザ、カントの系譜を踏まえて哲学的思考を行う若干の哲学者に関する研究と紹介を行いたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究遂行のために必要な文献には、外国古書店等に照会して収集しなければならないものが多いが、当該年度に発注したもので、いまだに入手することができないものが多く、経費支出できていない。 文献収集のためのルートを多様化して、年度内の入手と支払いを心掛けたい。
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