2015 Fiscal Year Annual Research Report
形而上学史再構築のための基礎的研究――カント《Opus postumum》への道
Project/Area Number |
23520019
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
福谷 茂 京都大学, 文学研究科, 教授 (30144306)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2016-03-31
|
Keywords | 形而上学 / カント / ヘノロジー |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度においては第12回国際カント学会でのメイン・レクチャーとしてので成果の発信に全力を注いだ。 カントの『遺稿Opus posthumum』を理解し、このテクストをカント解釈上において本来の意義を発揮させるためには本研究が提起する「ヘノロジー」の概念が必須であり、更にこの概念の導入によってカント哲学の内在的理解だけではなく、カント哲学の哲学史における位置もまた明らかにすることができるというのが本研究の主張である。この点は昨年度までに行われた『遺稿Opus posthumum』の重要箇所に関する試訳において果たすことができた。 これを踏まえて本年度は、①この成果の海外研究者との共有および、②各研究者が持つヘノロジー概念との連携、③日本哲学史のヘノロジー的形而上学史観への繰り入れに焦点を合わせた研究を行い、上記の国際学会において講演を行った。上記講演において予想以上の関心が寄せられたことで本研究の提起する観点の正当性に対する確信を深めることができた。本研究はカントを出発点とすることによるヘノロジー的形而上学史の樹立という次なる課題への移行という意味を持つことが自覚された。 特に本年度に得られた著しい成果としてはプロティノスが近世哲学史、とりわけスピノザ・ライプニッツ・カントを一体的に捉える上で果たす新しい接点を見出すことができたことである(「エピストロペ-」概念)。これは同時にいわゆる神秘主義を形而上学のうちへと奪還する作業へとわれわれをみちびくものだということができる。
|
Research Products
(3 results)