2011 Fiscal Year Research-status Report
バイオテクノロジーの時代における技術と人間の原理論
Project/Area Number |
23520021
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
檜垣 立哉 大阪大学, 人間科学研究科, 教授 (70242071)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山崎 吾郎 大阪大学, 人間科学研究科, 特任研究員 (20583991)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | フランス 国際情報交流 / 生権力 / 生命理論 / 倫理 / 技術 |
Research Abstract |
本年はバイオテクノロジーの時代における技術と人間の原理論の研究として、とりわけ檜垣がおこなっている最先端ときめきの事業ともリンクしながら、生命論と社会論、生命倫理と技術についての原理的研究をおこなった。この領域ではとりわけ現場性がもとめられるが、哲学的基盤をもとめるこの研究ではあえて技術や生命の哲学という、その実践を統括する場面に関する研究を主軸とした。とりわけ生命倫理学の基盤をフーコー的な生権力論にもとめていくことの是非をめぐって、多くの論者との対話を積み重ねた。旅費はブラジルにおける民族博物館訪問と、人類学者ヴィヴェロ・カストロ氏へのインタビュー、イギリスのロンドン大学ゴールドスミス校でのドゥルーズを中心としたシンポジウムでの檜垣の英語発表、フランスでのパリ第10大学エリー・デューリング氏訪問や、ラボルド精神病院訪問などにもちいた。研究成果としては現代思想に連載しているヴィータ・テクニカの掲載を続け、年度末にこれを青土社より書物として刊行するとともに、岩波書店の『思想』の論考二編を掲載し、またドイツ語による現象学研究の書物にも寄稿した。さらに生命倫理との原理論的な議論のまとめとして最先端ときめきの事業において編書を大阪大学出版会から刊行した。そのほか研究に連関する発表を、秋の日仏哲学会、日本現象学会でおこなうとともに、法政大学が主催するベルクソンに関する国際会議においてフランス語での発表をおこなった。さらに春の日仏哲学会では、技術論や生命論に人類学の方向から検討するフランスの人類学者フレデリック・ケック氏を招き、フランス語でのシンポジウムをオーガナイズした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
バイオテクノロジーの議論を、実践的な倫理学というよりも、むしろ哲学や現代哲学史の立場から明確にしようとする本研究は、初年度においては、生命倫理の歴史的展開やそのあり方を巡った議論を検討するとともに、そこで従来は生命倫理的な議論に関与しているとはおもわれていなかったフーコーの生権力の議論などがどのように関連かのうなのかあるいは不可能なのかを探った。あわせて二年目の研究に不可欠となる技術の存在論の探求の端緒をつけるため、檜垣自身の生命と技術に関する現代哲学的な研究のあり方をまとめ交換することができたとともに、さらにフーコーやドゥルーズなど現代フランス思想あるいは生命論を基盤とする諸研究を、21世紀的な場面で検討しているアクチュアルな思想にふれ(上述のヴィヴェロ・カストロ氏、フレデリック・ケック氏)、この点についても次年度以降のさらなる探求を行う基盤を設定したと考えられる。科研のテーマに即応した著作を一冊、編著を一冊刊行したことは、今年度なされた研究についての一般に多くを公開できる事態であると考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は技術について進められる研究をなお推進し、今年度の生命倫理学という基盤の探求に即応しながらも、さらに身体性、生命性、社会性、環境性などについての知見を重層的に増やしていくとともに、より技術論と生という主題、あるいは技術をもった人間が21世紀のバイオサイエンスの時代にいかなるあらたな人間像を形成しうるのかという視角から一層の研究をすすめていくことにしたいと考えている。 そのためには、現在生命と物質的性の中心の哲学的問題であると檜垣が想定する妊娠や子ども性に関する哲学の議論(講談社より刊行予定。すでに草稿は完成)を仕上げて世に問うとともに、それに付随する生殖技術やフェミニズムの問いの技術の時代における更新やあるいはそれをこえたさまざまな身体性の場面を探っていくことを課題として考えている。この点については何本かの雑誌論考において公にするとともに、国内国外での学会、とりわけ海外での外国語の発表に重点をうつし、フランスの諸大学やイギリスの大学ともっている関連を利用した研究訪問の実施などを行い外国雑誌への投稿などを目指したい。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
生命と技術の問題を軸に進められるこの研究は、本年度における生命倫理学の原理的基礎論についての研究とともに、とりわけ技術論を今後の21世紀の人間像に照らし合わせてどのように考えていくかということにポイントが置かれていた。そのラインでの思考は、檜垣が専門としているフランス哲学においても、フーコーやドゥルーズに関する狭い研究ではなく、とりわけアングロサクソンやラテンアメリカにおいて、技術論、STS、ポストSTS,社会論などにも多くの展開をみせている。これらを踏まえながら、生命と技術、生命の哲学に関する狭い意味での文献研究も継続すると同時に、こうしたさまざまな展開をみせる議論について、技術論や人類学の成果にとくに目を配りながら研究をすすめていきたい。また次年度は、檜垣が研究代表者である大阪大学の最先端ときめきでも、ドイツのビールフェルト大学や南京の国際記号学会での発表があり、これのほかにもアメリカでのドゥルーズ学会での英語の発表を行う予定になっている。こうした海外渡航においても、本科研の目的に即応するかぎりで、とりわけ英語やフランス語における海外での業績発表にまとをしぼって、旅費などを利用したり、海外雑誌に投稿するためのネィティヴ・チェックなどに研究費を利用したい。
|
Research Products
(6 results)