2011 Fiscal Year Research-status Report
健常者と障がい者との共生や対等性の意味に関する理論的考察
Project/Area Number |
23520022
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
宮崎 宏志 岡山大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (30294391)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新 茂之 同志社大学, 文学部, 教授 (80343648)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 応用倫理 / 障がい / 共生 / 対等性 / 人権 |
Research Abstract |
現在,公的機関においては,障がい者の雇用が促進されており,健常者と障がい者とが共生する形がとられてきている。しかし,バリアフリーといった設備面などで障がい者の働ける環境が整えられつつある一方で,こんにちの競争的な環境のもとで障がい者が健常者と対等に競い合うとはどのようなことを意味するのかに関しては,明確な基準がいまだ確立しているとは言い難い。そこで,本研究では,公的機関における健常者と障がい者との対等性とはどのようなものでありうるのかについて倫理学的視点から考察することを目的とする。 平成23年度は,宮崎と新は「健常者と障がい者との共生や対等性」というテーマに関係すると思われる文献,例えば「障がい者の側からみた現実世界や福祉の実態」に関する文献や,「自由や平等」,「連帯」,「人権」という主題に関わる重要文献などを収集し,その内容を整理するという計画であった。しかし,大震災の影響もあり,文献収集は予定していたよりも遅れているが,収集された文献については,その主張内容を精査した。また,そうした精査によって判明したのは,障がい者の側から考察されている哲学分野や倫理学分野の先行研究においては,理論的な側面だけではなく,実践的な側面も強く打ち出されており,その結果,研究としての厚みは確かにあるのだが,その一方で,理論的な掘り下げが徹底しきれていないという事柄が多々ある,ということである。したがって,平成24年度以降,本研究によって,そのような理論的な掘り下げを行っていく必要性を改めて認識した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大震災の影響もあり,文献収集は予定していたよりも遅れているが,収集された文献については,その主張内容を十分に精査できている。 また,特に,障がい者の側から権利や対等性に関して考察している哲学分野や倫理学分野の先行研究にみうけられる顕著な特徴は,理論的な考察にとどまらず実践的な提案や提言にまで踏み込んでいるという点であり,そのように多岐に渡る課題に取り組むという事情から,理論的な掘り下げという点では不十分な事柄が多々あることが発見できた。そうした問題意識に基づいて,宮崎と新はメールなどによって問題点や修正の方向に関して議論を重ねた。その意味で,文献収集等の遅れはあるものの,研究自体としては,おおむね順調に進展しているものと判断する。
|
Strategy for Future Research Activity |
宮崎と新は,それぞれ,「障がい者の側からみた現実世界や福祉の実態」,「自由や平等」,「連帯」,「人権」などに関わる重要文献の主張内容の要点を整理するとともに,メールなどを通じて整理内容に関して意見交換を行う。それに基づいて,新たな倫理学的モデルのビジョンを構成する。 宮崎は,主として障がい者の観点と,障がい者を受け入れる組織や機関の観点から考察を進め,新は,主として障がい者と共生する健常者の観点から考察を進める。 新は,1年間アメリカ滞在のため,現地で本研究に関わる重要文献に関して調査し,文献収集を行う。宮崎は,新の提供する情報に基づいて,重要文献の要点整理の作業に従事する。なお,こうした共同研究上の基本的な打ち合わせは,メールなどにて行う。 また,宮崎自身が身体に障がいをもっているため,適宜本研究をサポートしてもらうアルバイトを確保しながら作業を進めていく。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度は,大震災の影響のもとで,予算の確定が遅れ,さらに,どの程度の予算が見込めるのかも不明瞭であったので,文献収集の開始時期が大幅に遅れた。そのため,平成23年度の予算の未使用分が発生した。 平成24年度は,前年度に収集できなかった文献をできるだけ早く入手し,文献整理を行っていく。したがって,平成23年度の予算の未使用分を含めた平成24年度予算の大半は,そのような収集できなかった文献購入のためにあてられる。 新が,アメリカ滞在のため,当初予定していた岡山大学での研究打ち合わせが不可能になったため,新との研究打ち合わせはメールなどにて行う。また,新が日本不在で,日本での作業は宮崎が行うこととなったため,専門的知識の提供やアルバイトに関わる予算を当初の予定よりも増やさなければならなくなった。
|