Research Abstract |
現在,障がい者の雇用が促進されており,健常者と障がい者とが共生する形がとられてきている。けれども,バリアフリーといった設備面などで障がい者の働ける環境が整えられつつある一方で,こんにちの競争的な環境のもとで障がい者が健常者と対等に競い合うとはどのようなことを意味するのかに関しては,明確な基準がいまだ確立しているとは言い難い。そこで,本研究では,社会生活を繰り広げていくうえで,健常者と障がい者との対等性がどのようなものでありうるかを検討し,健常者と障がい者との望ましい共生の在り方を倫理学的観点から考察することを目的にしている。 平成25年度は,本研究の最終年度にあたるので,宮崎は,「対等性」や「連帯」などのテーマを核にして昨年度までに収集,整理した文献に示されていた諸見解を,障がい者や弱者の側の視点から批判的に吟味し,社会的に提言していくべき事柄を絞り込む作業に取り組んだ。特に,昨年度までの研究によって宮崎と新が見落とされがちであると確認した「健常者とは世界の立ち現われ方が違う存在者として障がい者を理解し尊重する」という側面に焦点を当てて,そうした作業に従事した。 また,新は,宮崎が絞り込んだ提言内容に関して,ケアリングやプラグマティズムの見地から,その実際的意義の確認作業や,修正すべき点の検討作業に取り組んだ。 宮崎と新は,それぞれの考察結果を摺合せ,本研究の成果として提言すべき倫理学的主張が,「対等である形」自体に関するものよりも「ある形が障がい者の側からすれば,なぜ対等な形なのか」に関するものであるという結論に至った。そして,本研究の成果を,2013年12月1日に香川大学にて開催された日本道徳性発達実践学会第13回香川大会において「ケアされる側からのインクルージョン再考」というタイトルで発表した。
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