2011 Fiscal Year Research-status Report
環境思想の深化と強化-現代ドイツ実践的自然哲学研究
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23520023
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
山内 廣隆 広島大学, 文学研究科, 教授 (20239841)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 実践的自然哲学 / ジープ / アービッヒ |
Research Abstract |
本年度の研究はルートヴィヒ・ジープの実践哲学の研究に力点を置いて行った。研究の方向は応用的なものだけに特化せず、どちらかと言えば純粋に哲学的議論に力点を置いた研究を行った。今年度の表面に現れた業績は以下のとおりである。1.講演:「応用ということ―ヘーゲルの啓蒙批判」、2011年10月7日、北海道大学大学院文学研究科・応用倫理教育研究センター、この講演では、現代の諸問題解決のためには、「啓蒙」を再度考察しなおすことが必要であるということを提起し、ヘーゲルの啓蒙批判の理解のためには、その宗教批判が重要であることを指摘した。その際、ジープの解釈を参考にした。2.講演:「哲学散歩―核廃絶、地球環境問題を哲学的に考える」、2011年11月18日、広島大学大39回東京イブニングセミナー、キャンパス・イノベーションセンター。3.翻訳:ルートヴィヒ・ジープ「ヘーゲルの国家はキリスト教国家か?」、『ぷらくしす』(広島大学応用倫理学研究センター)第13号、2012年3月1日。4.論説:「宣言ひとつ―ドイツの脱原発、日本でも可能」、中国新聞オピニオン、2012年1月15日。以上のように論文の形態はとらなかったが、二つの講演ともいつでも活字化できる状態にある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
先述したように、マイヤー・アービッヒよりも、ルートヴィヒ・ジープの実践的自然哲学を優先して研究した。というのも、ジープのいわゆる「具体倫理学」(Konkrete Ethik)のほうが、より体系的で包括的であるからである。ただ、ジープの論述は極めて晦渋であるのでその理解のためにはきっちりした哲学的議論をしなければならず、どちらかと言えば、応用的な問題よりも、純粋に哲学的議論を優先することになった。また、地球環境問題にしても、その根底には近代性の問題が存しているので、どうしても近代啓蒙に対する理解は必要と思われたので、『精神現象学』を中心にヘーゲルの啓蒙理解を明らかにすることに努めた。その際、ジープの精神現象解釈は有益であった。このように当初の予定と研究の道筋は少し乖離してきたが、研究は着実に深化してきていると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで述べてきたように、最初の計画よりは、ジープの実践的自然哲学中心、しかも応用的というよりは、純粋に哲学的な議論を優先させていくことになろう。その際、政治哲学的な議論が増えると思われる。昨年度は、ダルムシュタット工科大学のゲアハルト・ベーメ教授の講演会も主催し、大きく重要な示唆を得た。これからはジープ、アービッヒ以外の哲学者の実践哲学にも顔を向けていきたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度は三月にジープを訪ね、ドイツで議論する予定であったが、日程調整がつかず断念せざるをえなかった。今年度は、ドイツ訪問も含め、積極的に他の研究者との議論を行いたいと考えている。したがって旅費の増額を考えている。また、内外の研究者を招待することも考えている。
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