2011 Fiscal Year Research-status Report
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23520026
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
黒川 勲 大分大学, 教育福祉科学部, 教授 (20264319)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | スピノザ / 方法 / 真の観念 / コナトゥス |
Research Abstract |
交付申請書の「研究の目的・研究計画」に照らした研究実績の概要は以下の通りである。1 中世・17世紀科学革命期の科学論・自然哲学に関する西洋科学論及びホッブス、デカルト等の西洋近世哲学関係図書の入手と分析を行い、特にデカルトの『宇宙論』に注目し、スピノザの物体論・コナトゥス論との比較検討を行った。2 スピノザの『往復書簡集』の内容を吟味し、形而上学類と科学類に大きく大別し整理するとともに、科学的著作『虹に関する代数的論断』の一部の試訳を先行邦訳書・英訳書を参考におこなった。3 『エチカ』第2部に見られるスピノザの物体的世界の枠組みの考察を行った。その結果、スピノザの物体的世界は最単純物体を基本単位とする階層的な世界であることが明らかになると同時に、実体-様態関係から統合的な世界像を結ぶものであることが明らかになった。4 スピノザの自然哲学を含めた哲学全体の「方法」概念を明確化するために、方法論的著作『知性改善論』に見られる「真の観念」に注目し、方法確立の中心となる「真の観念」の特徴を他の虚構の観念等との比較分析によって明らかにした。スピノザ哲学における方法とは内的・反省的方法であることを明確にしえた。5 スピノザ『エチカ』の主題・体系的構成を整理確認するために、ドゥルーズ、メイヤー等の研究書の翻訳及び比較検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的に到達するための課題として、(1)スピノザとホッブス及びデカルトの自然観・物体観との比較研究、(2)西洋中世科学論との関係の解明、(3)17世紀科学革命との関係の解明の3点が挙げられるが、そのすべてに着手している。特に、(1)・(3)については具体的な知見、成果を得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
23年度の成果に加え、特に今後は西洋中世科学論との関係の解明に研究の力点を移し、ルネサンス期の自然哲学、すなわちブルーノの『原因・原理・一者について』等の自然哲学・形而上学的著作を中心に「原因」、「物体的世界構成」の解析を行う。 また、中世の西洋科学論、自然哲学に関する関係図書などの資料の収集を行い、オリーヴィ『神学命題2巻問題集』における「傾向説」、マルキア『神学命題注解』の「残留力」、そしてビュリダン『アリストテレス自然学8巻問題集』の「インペトゥス説」に注目して、西洋中世科学論の中世における「運動」と「力」について解析を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
24年度においてはルネサンス期の自然哲学,すなわちブルーノの『原因・原理・一者について』等の自然哲学・形而上学的著作及中世の西洋科学論,自然哲学に関する関係図書、先行研究論文などの資料を集中的に収集する。 また、文献調査、資料収集及び成果発表のために国内出張を行う。
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