2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23520026
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
黒川 勲 大分大学, 教育福祉科学部, 教授 (20264319)
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Keywords | 個物 / 延長 / 神 / コナトゥス / スピノザ |
Research Abstract |
交付申請書の「研究の目的・研究計画」に照らした研究実績の概要は以下の通りである。 1 スピノザの『往復書簡集』,未邦訳科学的著作『虹に関する代数的論断』及び『確率に関する論断』の試訳を進め, スピノザの自然哲学の全体像を昨年度に続き一層明らかにした。 2 スピノザの物体的世界の枠組みの前提となる,『エチカ』第2部における個物観を「思惟の及び延長の属性との対応」を踏まえて,認識論的枠組みから厳密に解読した。その結果,スピノザにおける個物とは,決定論的な心身並行論の徹底の中で,現実的には非存在であっても神において存在しなければならないという,スピノザ特有の個体・個物観が明確になった。 3 ボイルに関して,スピノザ『往復書簡集』に見られる内容について,『懐疑の化学者』等の科学論・自然哲学的著作を中心に「原子論」,「粒子論」の観点から対応状況を精査した。 4 ホッブスに関しては研究の進展が著しいため,特に国内の研究成果である『De Corpore』をはじめとした邦訳,関連する研究書・研究論文等の資料収集に努め,先行研究の読解を行い,特に物体・個物観についてスピノザとの比較検討を行った。 5 デカルトの物体的世界とスピノザの物体的世界の構成に関する比較を行うため,デカルト『省察』における神と延長的実体との関係を確認した上で,スピノザの神と延長的実体との関係を吟味した。その結果,両者は単なる形而上学的二元論と一元論の異なりではなく,認識論的・倫理学的に相互に独自の思想であることが一層明らからになった。
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Research Products
(1 results)