2011 Fiscal Year Research-status Report
ベーシック・インカムの哲学的意義についての日独共同研究
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23520028
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
別所 良美 名古屋市立大学, 人文社会系研究科, 教授 (10219149)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 国際研究者交流 / ドイツ / ベーシック・インカム / 労働観 / 自由論 / 平等論 |
Research Abstract |
ベーシック・インカム(以下BIと略記)とは無条件基本所得であるが、その含意するところは広範かつ深く、人間にとっての「労働」の意義に関わるものであることが次第に明らかになった。研究代表者の文献研究を踏まえて、福山女子短期大学の安川悦子氏を訪れて(7月8日)、BIの「労働権」との関係について議論した。名古屋哲学研究会の例会(10月16日)においては、斉藤拓氏が「ベーシック・インカムの争点」、本研究代表者・別所が「ドイツにおけるベーシック・インカム」について報告し、議論した。さらに2012年2月10日から20日にかけてドイツを訪れ、島田信吾教授(デュッセルドルフ大学)、M.ケトナー教授(Witten/Herdecke大学)、S.リーバーマン氏(BI研究者)、そしてG.ベルナー(元Karlsruhe大学教授)と議論し、ドイツのBIをめぐる状況について多くの知識を得た。特にドイツにおけるBI論をリードするG.ベルナー教授との対話からは、BIが税制問題とかかわり、付加価値税と接合されたBIが人間労働の解放と経済の活性化につながるという重要な示唆を受け、また参照すべき文献についての情報もいただいた。何よりも今回の訪独は、ドイツにおけるBI研究者やBI推進者と個人的なコンタクトを持ちえたことであり、ケルン市では「ベーシック・インカム市民運動ケルン」の代表メンバーと会談する機会を持ちえたことは、日本とドイツとのBIに関するネットワーク構築を目指すという本研究の目的に一歩近づいたと考えられる。 今後、BIに関する理論的研究とともに、ドイツとの人的交流を深め、また拡げてゆきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の目的における「ベーシック・インカム論の哲学的意義を解明する」という点に関しては、平成23年度には研究代表者自身の研究および研究会において問題の所在が明らかになったという段階であり、これに関しては名古屋哲学研究会の雑誌『哲学と現代』第27号(2012年2月発行)に研究代表者の論文「平等論と労働観の変容に向けて」(p.4-12)および「ドイツにおけるベーシック・インカム」(p.80-96)で公表した。「日独研究者のネットワークを構築」という点に関しては、ドイツの研究者および市民運動家との個人的コンタクトを築き足がかりが出来たと考えられ、当初の予定以上の成果があった。しかし日本国内におけるネットワークに関してはまだ十分に行なえていないと言わざるを得ない。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、ベーシック・インカム関係の文献研究を進めるとともに、日本国内の研究者との連携を構築することに重点を置きたい。また、平成24年の9月にドイツのミュンヘンにおいて第14回ベーシック・インカム・世界ネットワーク大会(Kongress des Basic Income Earth Network)が開催されるので、それに参加して、ドイツの研究者・推進者のみならず、諸外国の関係者との交流を持ちたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
関係文献資料の購入に研究費を使用する。国内の研究者との交流を進めるために、研究代表者が出張2回、他の研究者を招いて名古屋で開く研究会を1回ないし2回開催するための費用に研究費を使用する。平成24年9月にドイツで開催される第14回ベーシック・インカム・世界ネットワーク大会に研究代表者が出席し、合わせてドイツ各地の研究者と交流するために10日から2週間のドイツ出張のために研究費を使用する。 平成25年3月にドイツの研究者を一人日本に招聘し、他の日本の研究者も交えて、平成25年9月に予定している国際シンポジウムの準備を行うために研究費を使用する(但し、これは平成24年9月のドイツ出張時の結果を踏まえて、平成25年度に延期する可能性もある)。
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Research Products
(2 results)