2012 Fiscal Year Research-status Report
論理哲学の学際研究ー直観主義論理の推論・証明理論を中心として
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23520036
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
岡田 光弘 慶應義塾大学, 文学部, 教授 (30224025)
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Keywords | 直観主義 / 証明論 / 線形論理 / フッサール / 図形推論 / 通信プロトコル / ウィトゲンシュタイン / 認知科学 |
Research Abstract |
前年度に引き続き、直観主義論理を中心とした現代論理学的研究を行った。直観主義論理と古典論理を含む論理の一元論的捉え方について、線形論理的手法と観点を拡張することを通じて検討し、成果を挙げた。このことを証明論、論理的意味論の両面から考察し、またその両者を融合する見方を与えた。 フッサール、ヒルベルト学派、ウィトゲンシュタインを中心とした論理哲学の研究を進め、直観主義論理と古典論理との関係について新しい哲学的知見を得た。特に等式算術証明体系に対してフッサールとウィトゲンシュタインが20世紀初めに果たした前駆的な役割について新たな解明の手掛かりを与えた。フッサールの論理哲学とヒルベルトの論理哲学の関係や相違について研究を進めた。まら、ウィトゲンシュタインと英国構成主義論理学者グッドシュタインの論理哲学上の影響関係について考察を進めた。 図形的表現による論理推論証明体系について、直観主義論理的図形推論と古典論理的図形推論の区別を特徴付ることに成功した。 以上の成果を基に、認知科学的観点から直観主義論理と古典論理の推論プロセスモデルを検討した。特にこれまで認知心理学分野でなされてきた論理推論の先行研究を我々の立場から批判的に検討した。 直観主義論理と古典論理の関係についての新しい我々の視点に立ってコーエン流のForcingモデル構成(またはFitting-Ono流のモデル構成)を捉え直し、 一種の認識論理的枠組みに適用して、情報科学分野の情報通信モデル(特に通信プロトコル安全性)の計算論的完全性の問題に応用した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
直観主義論理を中核とした論理の一元論的把握のモデル構築が予想以上に進んでいる。 図形推論の中に直観主義論理的推論と古典論理的推論を予想していた以上に区別することができた。 オイラー図論理推論プロセスモデルとジョンソン=レアードらの認知推論プロセスモデル(メンタルモデル)の比較研究に予想を超えた成果があった。 直観主義論理と古典論理の統合的研究成果の応用として、通信プロトコルの計算論的完全性証明の中核部分を完成させた。 フッサール、ヒルベルト、ウィトゲンシュタインなどの論理哲学研究を通じて、直観主義論理と古典論理の関係についてこれまで見逃されていた新しい知見を得ることができた。例えば、直観主義タイプ理論、項書き換え理論と、フッサールの現象学的論理研究との間の関係を解明した。また、論理的矛盾や等号の論理などについてウィトゲンシュタイン及びフッサールの研究内容を明確に示すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
直観主義および直観主義論理に対する新しい学際的視点を与える。直観主義論理より根底的な構造を取り出すことによりこの研究を遂行する。特に、線形論理や線形論理よりさらに低層的と考えられる単純論理(申請者が提出したSimple Logic)などを基盤として、直観主義論理、古典論理をはじめとする様々な論理体系を一元論的にとらえ直す論理学理論を構築していく。 伝統的な言語的論理では捉えられてくることが少なかった図形推論も我々の視野に含める。 フッサール、ウィトゲンシュタインおよびこれらの周辺の現象学系、言語分析系哲学研究を通じて、本課題研究で進める統合的論理解明に対して、その哲学的基盤を与える。 認知科学的研究手法、行動遺伝学的研究手法、脳科学的研究手法、計算機科学・情報科学的研究手法もこの研究に直接取り入れていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
海外連携研究者たちとの共同研究打ち合わせのための旅費を計上する(60万円前後の予定。)本研究課題に関して欧米の論理学研究者たち、特にフランスの証明論、直観主義、線形論理学者と共同研究を進めておりこの形状予算もフランス研究者との研究打ち合わせに用いられる。 被験者実験の実施に伴う被験者謝金及び実験準備や資料整理のための研究補助などの謝金の予算を計上する。(合計20万円前後の予定)。論理推論の言語的側面と図形推論的側面との比較研究を中心とした実験費用に用いられる。
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