2016 Fiscal Year Annual Research Report
The British Moral Sense Theories and the Development of Hume's Moral Philosophy: from Nature to Norm
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23520037
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Research Institution | International Christian University |
Principal Investigator |
矢嶋 直規 国際基督教大学, 教養学部, 教授 (10298309)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2017-03-31
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Keywords | ヒューム / バトラー / スコットランド啓蒙思想 / 近代合理主義 / 経験論 / 道徳感覚 / 自然宗教 / スピノザ |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年度は本研究課題の最終年度となり、これまでの研究成果をさらに発展させ研究をまとめることができた。その成果を三回の国会学会での発表(うち一回は招待講演)、二回の国際会議(うち一回は招待講演)での発表、二本の招待論文、一本の書評および辞典項目執筆を通して発表した。2016年9月からは米国プリンストン神学大学ゴードン・グレアム教授の研究協力の下で、スコットランド哲学における合理主義批判を自然宗教および理神論批判との関連において検討した。 具体的にはヒューム道徳哲学成立史における道徳感覚学説の意義をジョゼフ・バトラーによる合理主義と道徳感覚学説の統合の試みとの比較によって考察した。とりわけ、バトラーとサミュエル・クラークの関係を、ヒュームの合理主義批判の背景として比較した。そしてバトラーにおける類比と蓋然性に基づく自然神学および啓示神学の正当化の理論を、ヒュームが認識論による道徳論の基礎付けのとして用いた理論構造を解明した。その際ヒュームによる神の宇宙論的存在証明の内実としての空間・時間論および因果論への批判の背景が、バトラーのクラークへの批判にあることをバトラーとクラークの書簡の検討を通して明らかにすることができた。その成果はプリンストン神学大学において開催された国際会議で発表した。この観点に基づきヒュームの自然宗教批判がヒュームの道徳哲学成立最大の背景になっていることを明確にし、ヒュームにおける合理主義批判と道徳感覚学説とのあらたな関連を示すことができた。
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