2011 Fiscal Year Research-status Report
地域コミュニティの日常に出発し日常に還る倫理(エートス)の研究
Project/Area Number |
23520039
|
Research Institution | Tokyo City University |
Principal Investigator |
山本 史華 東京都市大学, 知識工学部, 准教授 (20396451)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 健 東京都市大学, 知識工学部, 准教授 (40259726)
稲葉 景 星美学園短期大学, その他部局等, 講師 (60599041)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
|
Keywords | エートス / 日常 / 地域コミュニティ / 地域運営学校 / 初等教育 |
Research Abstract |
山本は、コミュニティ・スクールに指定されている世田谷区のT小学校で、2011年8月17-18日、同小学校の5・6年生とその保護者を対象にした倫理ワークショップ「いのちを考える」を開催した。改正臓器移植法で15歳未満のこどもの脳死臓器移植が可能になったが、この問題は初等教育の現場ではあまり扱われておらず、倫理教育としては適切と考えた。ワークショップの内容は、第30回日本医学哲学・倫理学会大会(2011年11月5日、東京大学)において、「こどもに脳死臓器移植問題を教えるということ」という研究発表のなかで報告した。また『東京都市大学共通教育センター紀要』Vol.5、2012に論文(「脳死臓器移植におけるこどもの意思 自己決定を促すための二つの提案」)としてまとめた。 井上は、2年前にT小学校で実施した「子どもと保護者の地域とのかかわりに関する調査」の結果を教職員研修会(10月)の場で報告するとともに、パネルディスカッションに参加した。同調査は、山本を代表とする別の科研費研究(平成20-22年度)で実施したものであるが、コミュニティのエートスを捉えるためには長期的な研究が必要であり、調査で得られた知見をコミュニティ・スクールの教職員がどのように咀嚼していくかは、「地域とともに子どもを育てる教育」を検討するうえで重要な視点となる。 稲葉は、キリスト教教育におけるコミュニティに関する研究を行った。西洋では伝統的に共同体のエートス形成の中心はキリスト教共同体である。3・11東日本大震災以降、共同体のエートスが揺さぶられた福島のカトリック小学校において、いかにコミュニティをキリスト教精神が支えたのかについて、上智人間学会(2011年9月11日、上智大学)で行われたシンポジウム「東日本大震災」において、「被災地にとどまるということ 希望への道の途上で」と題して発表をした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、どうしてもコミュニティ・スクールに指定された公立学校の協力が不可欠となる。山本は2009年度より世田谷区のT小学校の学校運営委員会をつとめ信頼関係を築きあげてきた。そのため学校側も一定の理解を示してくれており、本研究者との連携体制がしっかりと整えられていることから、おおむね順調に進展している、といえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
日常という観点からのエートス研究を理論化していくと同時に、コミュニティ・スクールにおける倫理教育の実践活動も引き続き行っていく予定である。また地域コミュニティのエートスを捉えるためのアンケート調査の実施計画を具体化していく。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
東日本大震災とそれに続く原発事故は、日本の地域コミュニティのエートスを大きく変容させる可能性を孕んでいる。今後はその問題の理論的および調査研究も併せて行う計画であり、そのための物品費(書籍代など)や旅費も計上する予定である。 2011年度は、研究発表や論文という形での成果がさほど多く出たわけではないため、研究発表する機会が自ずと限られ、結果、繰越金が生じたが、今後研究成果が徐々にあがってくるにつれて、発表の機会も増えると思われる。繰越金は、そのための旅費として使うことを予定している。
|
Research Products
(2 results)