2011 Fiscal Year Research-status Report
フェミニンの哲学とケアロジー 「女/母(わたし)」の視座から
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23520041
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Research Institution | Rissho University |
Principal Investigator |
金井 淑子 立正大学, 文学部, 教授 (50152773)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | フェミニン / ジェンダー / 身体性 / 女/母 / 本質主義 / 構築主義 / ナラトロジー / ケアロジー |
Research Abstract |
研究課題「フェミニンの哲学とケアロジー 女/母(わたし)の視座から」は、グローバル化する世界に露見する「近代」の行き詰まった状況に哲学およびフェミニズム理論が対峙しうる思想的な地平、近代への対抗軸を拓こうとする問題意識から立てたテーマである。フェミニズムの場面で、「自然」や「身体」さらに「母性」といった言葉を出せば「母性本質主義」という批判は避けがたい。しかし本研究は自然・身体・母性をタブー視せず、それらを主題化することによって、身体を悪魔払いしない「哲学としてのフェミニズム」の可能性を問うていくものである。フェミニズムの問いを「身体」に向けること、「身体」に届くフェミニズムの構築を課題としている。母性本質主義批判の誤解をいかに解くか。この課題を初年度の取り組み課題とした。また哲学の場面では、本研究が立てている「フェミニンの哲学」も、まだまったくマイナーな動きである。しかしマイナーながらいくつかの思想的・運動的な水脈はたどりうる。初年度の取り組みとしては、「「フェミニンの哲学」について、本研究が「女/母(わたし)」のカテゴリーを立て、あえてそこに「母のメタファー」「母の領域」への問いを含ませていることについて、「〈母〉なるものへの問い」を要請することを通して、〈近代〉が封印してきたものを召喚することの意味を明らかにすることを試みた。フェミニズムと哲学、両場面に向けての発言として、初年度は、二つの論稿にまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究のテーマについては、研究者の最新著『依存と自立の倫理 女/母(わたし)の身体性から』に思いがけずいくつかの場面での書評・合評・批評の機会をうることができた。それによって本研究の意義と課題を明確にするいくつかの示唆もえた。さらにそれへの応答を意識して書いた初年度の二つの論稿は、関係領域の研究者にすでに恵贈しており、そこからまたいくつかの合評会につながる見通しもある。初年度の取り組み課題としたことを一定程度はたすことができたと考えている。ただひとつ予算執行において次年度に残すことになった金額については、台湾・高雄大学への訪問研究を予定していた計画が双方の事情で延期されたことによるものである。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に続き「フェミニンの哲学」「女/母(わたし)」のカテゴリー概念的精査を継続しつつ、「ケアロジー」のカテゴリーについても、概念化と理論構築への作業にとりかかる予定である。後者については、すでに先行して進めてきている「ケアロジーを創る」若手研究者の会の共同研究を勧める中で、問題意識を共有する研究者との論争的な議論を踏まえ、研究成果を年度末までに2-3本の論文にまとめる予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
図書・資料収集、学会・研究会参加・発表が主たる研究費の使用目的になる。「ケアロジーをつくる若手研究者の会」は月例会として年10回程度を予定しており、テーマによって外部講師依頼の謝金支出もある。研究出張については海外出張を予定している(米国ペンシルバニア大学東洋文化比較研究学部)。本研究に関係する海外哲学系メディアへの発言として、ユネスコの哲学思想系の雑誌『ディオゲネス』の「日本哲学特集」に寄稿した論稿「フェミニンの哲学と臨床哲学」(英語・仏語)があるが、この拙稿に寄せられたペンシルバニア大学などいくつかの研究者からリアクションに答えるものとして位置づけた出張計画である。「他者を内在化させた〈女/母(わたし)〉という一人称」の問題提起に強い関心が寄せられていることから、本研究推進にとっても、欧米の日本研究者との間で意見交換の機会を追求することは意味有ることと考え訪問研究を計画しているものである。なお「ケアロジーを創る」テーマでの台湾・高雄大学への研究訪問についても2013年1-3月で再調整中である。
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Research Products
(7 results)