2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23520043
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Research Institution | Osaka Institute of Technology |
Principal Investigator |
内田 浩明 大阪工業大学, 工学部, 准教授 (90440932)
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Keywords | カント / 『オプス・ポストゥムム』 / スピノザ主義 / エーネジデムス |
Research Abstract |
当年度は、カントの『オプス・ポストゥムム』の思想的境位を明らかにすべく以下の3点を中心に研究を遂行した。まず前年度までの成果を踏まえた『オプス・ポストゥムム』とフィヒテとシェリングとの関係に関する翻訳(共訳)である。フィヒテやシェリングが最晩年のカントに影響を与えたか否かについては海外のカント研究者の間でも意見が分かれるが、『オプス・ポストゥムム』のスペイン語の訳者であるフェリクス・ドゥケはシェリングやフィヒテからの影響よりもむしろカント自身の考えを開陳するために彼らの概念を利用したという独創的な解釈を行っている。日本では殆ど研究されていないテーマのしかもスペイン語によるカントの研究論文の翻訳を日本ではじめて行ったことが、その意義である。 次に、『オプス・ポストゥムム』と『エーネジデムス』との関係に関する研究である。『オプス・ポストゥムム』には、これまで報告者が究明してきたスピノザ(主義)と同様に『エーネジデムス』への多くの言及が見られるが、そのいずれもが曖昧模糊としている。しかしカントの言及は空間と時間の外なるものを認めない「観念論」の文脈に集中しており、しかも「自己定立」に関係づけられる箇所も散見される。こうしたことから『エーネジデムス』への言及が単なる批判を超えて空間と時間において自己自身を客体化するというカントの自己定立論の形成に一定の寄与をした可能性があることを究明した。ただし、『エーネジデムス』はラインホルトに関する叙述が多くを占めているため、予想以上に時間を要した。本報告書作成時点では成果を公表するに至っていないが、近いうちに論文として公開予定である。 最後に、スピノザ(主義)との関係についても継続的に研究し、批判期のカントの文言をバウムガルテンなどに関連づけながらこれまでの報告者の議論をさらに補強する形でスピノザ協会にて口頭発表を行った。
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Research Products
(2 results)