2011 Fiscal Year Research-status Report
創造的跳躍としての類比(アナロジー)-隠れた方法概念によるディルタイ哲学の再構築
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23520045
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
山本 幾生 関西大学, 文学部, 教授 (00220450)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ディルタイ / 類比 / アナロジー / 理解 / 追体験 / 解釈学 |
Research Abstract |
本研究は、これまでのディルタイ研究において積極的に主題化されなかった「類比(アナロジー)」を隠れた方法概念として捉え、彼の哲学の再構築を目指している。本年度は1年目として、1.彼の哲学の初期から精神科学の方法概念として類比が挙げられていたこと、2.これによって中期から晩年の追体験・理解概念が形成されてきたこと、これらを解明し、その成果を研究会・学会・論文で公表した。1.2.の内容、そして、3.その意義、重要性は以下の通りである。 1.彼は初期論理学講義の中で、J.S.ミルを批判し、精神科学の方法を類比に求めた。すなわち彼は、ミルが『論理学体系』で自然科学の方法論を演繹の援用による帰納法の確立に求め、それを精神科学へ適用したのに反対して、自然科学的な個から普遍あるいは普遍から個へ進む帰納・演繹ではなく、個から個へ進む類比に、精神科学固有の方法論を求めた。 2.そして個から個への類比は、創造力の働きによって、非感覚的不可視なものへの創造的跳躍を行う働きとして、中期から晩年に、外界そして他者の心的生の実在性の問題の中で追体験・了解概念の意味内容を形成した。すなわち、自己と他者が心的生の抵抗経験のなかで相関的に形成されるさいに、両者の類似性から他者も自己と同様の心的存在者であることが「類比」される。ここでの「類比」は、単なる推論形式ではなく、抵抗経験における「体験」の様態を示す。この「類比体験」が心理学的には追体験として、解釈学的には理解として語られたのである。 3.以上の成果内容は、認知心理学でのアナロジー理論(ヘッセ:実質的アナロジーの水平・垂直関係、ホリオーク:類似・構造・目的の多重制約理論)を援用し、ディルタイの想像力論で語られる追体験・理解概念をも視野に入れたものであり、従来の研究に対して新たな視角を開き、本研究の最終目標「ディルタイ哲学の再構築」の確かな礎石となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は研究期間が3年間であり、それに応じて年度ごとの目標地点を設定し、全体で三段階のステップを踏んで研究全体の目標を達成する計画を立てている。本年度は、その第一段階の達成を目標にしている。 その三段階とは、(1)ディルタイが初期論理学講義(1860/70年代)でJ.S.ミルの帰納に反対して類比を挙げている点に注目し、類比には帰納・演繹にない〈創造的跳躍〉が含まれ、これが彼の〈表立った方法概念〉である心理学的・解釈学的な追体験・理解を形成していること、(2)そして中期(80/90年代)の精神科学の基礎づけから晩年(1900-11)の歴史的世界の構築は、その学的客観性を、類比が捉える類似・連関・類型に求めていること、(3)かくして彼の哲学は、創造的跳躍を含んだ追体験・理解によって、精神科学固有の客観性に基づく歴史的世界の創造的な構築を目指した哲学であること、以上の三段階である。 この第一段階((1))で挙げた、類比概念の解明、そしてそれと追体験・理解概念との関係の解明は、上記「研究実績の概要」の1と2に挙げた内容で、本年度の研究成果として研究会・学会・論文で公表された。 以上、3年間の計画に照らして、本年度はその第一段階の目標を達成し、その成果を公表しており、研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は資料の収集と意味分析、そして研究者の相互批判によって推進されており、今後の研究の推進方策も、本年度と同様に、資料収集、データの蓄積、データの意味分析、研究会の開催、成果の公表と相互批判、研究途上など最新の研究の聴き取り調査、等にあり、この一連のプロセスの遂行によって研究を推進する。 そして、次年度の研究目標は、上記「現在までの達成度」に記している(2)に、すなわち、「精神科学の基礎づけおよび歴史的世界の構築に固有の学問的客観性が類比による類似・連関・類型に求められていることの解明」にあるため、資料に関しては、精神科学の基礎づけに関する資料を中心に収集する。また、研究会は2ヶ月に1回の割合で開催して相互批判を繰り返し、そのうち夏季休暇中には研究合宿という形態で開催して集中的な討論を行う。これによって、春学期の研究の総括とともに、秋学期における研究の方向性・課題・公開の目途を立て、研究目標の達成に向けて研究を推進する。 なお、秋学期はサバティカル期間のため、相互批判のための聴き取り調査と研究会出張などは、秋学期に重点的に行うなどの方策がとれる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記の推進方策に応じて、研究費は、次のように使用することを計画している。まず資料の収集に関しては、ディルタイの精神科学の基礎づけおよび歴史的世界の構築に関する資料を中心に、その周辺部分の解釈学および心理学関係の資料も含めて収集し、「物品費」として使用する。そして研究会および研究者の相互批判に関しては、研究会開催そして聞き取り調査のための出張などの費用を「旅費」として、研究会への講師招聘および専門的知識の提供のための費用を「人件費・謝金」として、使用する。 また、本年度は研究初年度として5月から6月にかけて、本研究の全体構想について研究者の助言を受けるとともに、本研究に関連の深い日本ディルタイ協会事務局(法政大学)に出張して研究会開催の日程調整を行う予定でいたが、東北大震災の影響で東京圏への出張および東京圏研究者からの助言インタヴューを実施することができず、10,8178円の次年度繰越金が生じた。そのため、次年度は、6月に東京圏(法政大学)での研究会の開催および本研究の中間地点での助言インタヴューを実施し、そのために次年度繰越金を、次年度予算の「旅費」および「人件費・謝金」に合わせて、「旅費 95,000円(東京出張1泊1回×2名)」および「人件費・謝金 20,000円(助言2名)」として使用することを計画している。
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Research Products
(5 results)